新値足とは、株価が新しい高値や安値を更新したときだけ線を書き足していくチャートです。最も一般的な「新値三本足」を指して新値足と呼ぶことがほとんどです。

ローソク足との決定的な違いは、時間の概念がないことです。1週間動かなければ1週間分の線は書かれず、1日で大きく動けばその日だけで線が伸びます。「時間が経ったから」という理由でチャートが進まない——この一点が、だましの少なさにつながっています。

この記事では、書き方のルールから、陽転・陰転の判断、そして新値足の最大の弱点と、それでも使う価値がある理由まで解説します。

この記事でわかること

・新値足の書き方(3つのルールだけ)
・陽転・陰転とは何が起きた状態か
・時間を無視することで何が得られるのか
・新値足の最大の弱点(転換が遅い)
・三本足以外の本数をどう選ぶか
・カギ足・P&F・練行足との違い

新値足とは?ローソク足との違い

項目 ローソク足 新値足
横軸 時間 時間ではない(新値の更新回数)
線が増える条件 1日経てば必ず1本 新値を更新したときだけ
使う価格 始値・高値・安値・終値 終値のみ
ヒゲ ある ない
向いている相場 すべて トレンドが出ている相場

終値しか使わず、ヒゲも記録しないため、日中の細かい上下は完全に無視されます。これが「ノイズを削ぎ落とす」と言われる理由です。

もともとは日本で古くから使われてきた罫線(けいせん)の一種で、海外では Three Line Break として知られています。

書き方のルールは3つだけ

新値三本足のルールは非常にシンプルです。

状況 どうするか
① 陽線が続いている状態で、直前の高値を更新 陽線を1本追加する
② 陽線が続いている状態で、直近3本の安値を下回った 陰線に転換(陰転)
③ どちらにも当てはまらない 何も書かない

陰線が続いているときは、上下を入れ替えて同じことをします。安値を更新すれば陰線を追加、直近3本の高値を上回れば陽線に転換(陽転)です。

③がこのチャートの特徴です。何日値動きがあっても、条件を満たさなければチャートは1本も増えません。横ばいの相場では、新値足は止まったままになります。

陽転・陰転とは何が起きた状態か

陽転(買いサイン)
陰線が続いていた状態から、直近3本の陰線の高値を終値で上抜けた
→ 下落の勢いが尽きた合図
陰転(売りサイン)
陽線が続いていた状態から、直近3本の陽線の安値を終値で下抜けた
→ 上昇の勢いが尽きた合図

「三本」という数字に意味があります。直近3本ぶんの値幅を丸ごと打ち消すだけの反対方向の動きが必要ということです。小さな押しや戻りでは転換しません。

つまり新値足の転換シグナルは、「たまたま1日下げた」では絶対に出ません。この設計が、だましの少なさを生んでいます。

時間を無視すると何が得られるのか

得られること 中身
ノイズが消える 日中の上下やヒゲが記録されない
トレンドが視覚的に明快 陽線が続く=上昇、陰線が続く=下降。それだけ
判断が機械的になる 解釈の余地がなく、誰が見ても同じ結論になる
迷う時間が減る 横ばい相場ではチャートが動かないので、手を出さずに済む

最後の行が実は大きい効果です。休むも相場という格言がありますが、休むのは意外に難しいものです。新値足を使っていると、方向感のない相場ではチャートそのものが更新されないため、自然と手が止まります。

新値足の最大の弱点|転換が遅い

ここが記事の山場です。だましが少ないことと、シグナルが遅いことは同じことの裏表です。

項目 新値足
だまし 少ない ✅
シグナルのタイミング 遅い ❌
天井・底で買える/売れるか できない。必ず頭と尻尾は残す

陰転が出るのは、直近3本の陽線の安値を割ったときです。つまり、天井から相当下げてからでないとサインは出ません。これは頭と尻尾はくれてやれという格言をそのまま形にしたようなチャートだと言えます。

この性質から、次のような相場では成績が悪くなります。

苦手な相場 何が起きるか
上下の激しいレンジ 陽転と陰転を繰り返し、往復で損失が積み上がる
急騰・急落 サインが出たときには大きく動いた後になっている
短期売買 日足の新値足は数日〜数週間単位。デイトレードには向かない

三本以外の本数をどう選ぶか

「三本」は慣習であって絶対ではありません。本数を変えると性格が変わります。

本数 転換の頻度 向いている使い方
二本足 多い 早く反応したい。だましは増える
三本足 標準 最も使われる。まずはここから
五本足 少ない 大きなトレンドだけを取りたい

本数を増やせば、だましは減るがシグナルはさらに遅くなります。この二律背反はどんな本数を選んでも消えません。「だましも少なく、シグナルも早い」設定は存在しない、という点を先に理解しておく必要があります。

選び方の目安は、自分が耐えられる含み損の大きさです。転換が遅いほど、含み損を抱えたまま待つ場面が増えます。

他の非時系列チャートとの違い

時間を横軸にしないチャートは、新値足以外にもあります。

チャート 線が増える条件 特徴
新値足 新値を更新したとき ルールが最も単純
カギ足 一定幅の逆行があったとき 転換幅を自分で決める
ポイント&フィギュア 一定の値幅を動いたとき ○と×で記録する
練行足 一定の値幅を動いたとき レンガ状に積み上がる

いずれも「時間ではなく価格の動きでチャートを進める」という思想は同じです。新値足はそのなかで最もルールが単純で、パラメータの設定がほぼ不要という点が特徴になります。

実践での使い方|単独で使わない

新値足を実際に使うときは、単独で判断しないのが基本です。

役割 使うもの 何を見るか
大きな方向 新値足 陽転しているか陰転しているか
入るタイミング ローソク足 日中の動きと出来高
勢いの確認 出来高 転換に出来高が伴っているか
行き過ぎの確認 RSIなど 陽線が続きすぎていないか

新値足は「いま買うべきか」を教えてくれるチャートではなく、「いまどちら向きの相場か」を教えてくれるチャートです。方向の判断に使い、タイミングは別の道具で決める。この分業がうまくいきます。

陽線が7本、8本と続いているときは、上昇が長く続いている状態です。トレンドとしては強いものの、移動平均乖離率などで行き過ぎを確認しておく価値があります。

どこで見られるか

場所 備考
証券会社の取引ツール チャートの種類から選ぶ。対応していないツールもある
チャート専門のサービス Three Line Break という名称で用意されていることが多い
自分で書く 終値の一覧があれば手計算でも作れる

ツールで見つからないときは、英語名の Three Line Break で探すと出てくることがあります。設定項目は本数だけで、初期値は3本になっているのが一般的です。

新値足に関するよくある質問

新値足とローソク足の違いは何ですか?
横軸が時間かどうかが最大の違いです。ローソク足は1日経てば必ず1本増えますが、新値足は新値を更新したときだけ線が増えます。横ばいが続けばチャートは止まったままです。また新値足は終値しか使わず、ヒゲも記録しません。そのぶん日中の細かい上下というノイズが消え、トレンドの方向が見やすくなります。
陽転・陰転はどう判断するのですか?
陰線が続いている状態で直近3本の陰線の高値を終値で上抜ければ陽転、陽線が続いている状態で直近3本の陽線の安値を終値で下抜ければ陰転です。3本ぶんの値幅を丸ごと打ち消すだけの動きが必要なので、小さな押しや戻りでは転換しません。この設計が、だましの少なさにつながっています。
新値足はだましが少ないというのは本当ですか?
転換の条件が厳しいため、小さな値動きでシグナルが出にくいのは事実です。ただしそれは同時に「シグナルが遅い」ことも意味します。だましが少ないことと反応が遅いことは同じことの裏表であり、天井や底で売買することはできません。頭と尻尾は必ず残す前提のチャートだと理解しておく必要があります。
三本足以外の設定にしてもよいのですか?
構いません。二本足にすれば転換が早くなる代わりにだましが増え、五本足にすればだましは減る代わりにさらに遅くなります。この二律背反はどんな本数を選んでも消えません。選ぶ目安は、自分が耐えられる含み損の大きさです。転換が遅い設定ほど、含み損を抱えたまま待つ場面が増えます。まずは標準の三本足から始めるのが無難です。
新値足はデイトレードに使えますか?
日足の新値足は数日から数週間単位で動くため、デイトレードには向きません。分足で新値足を作ることは技術的には可能ですが、転換の遅さという性質は変わらないため、短時間で判断が必要な取引とは相性がよくありません。新値足はスイング以上の時間軸で、大きな方向を確認する道具として使うほうが本来の性格に合っています。
陽線が何本も続いているときはどう見ればよいですか?
上昇トレンドが継続している強い状態です。ただし7本、8本と続いている場合は、上昇が長く伸びている状態でもあります。トレンドに沿うという意味では素直ですが、移動平均乖離率などで行き過ぎを確認しておく価値があります。新値足は方向を教えてくれますが、行き過ぎているかどうかは教えてくれません。
新値足はどこで見られますか?
証券会社の取引ツールのチャート種類から選べることが多く、対応していない場合はチャート専門のサービスで確認できます。英語名は Three Line Break で、この名称で用意されていることもあります。設定項目は本数だけで、初期値は3本になっているのが一般的です。終値の一覧があれば手計算で書くこともできます。
新値足だけで売買してよいですか?
単独で使うのは勧められません。新値足は「いまどちら向きの相場か」を教えてくれるチャートで、「いま買うべきか」を教えてくれるものではないからです。大きな方向は新値足で判断し、入るタイミングはローソク足と出来高で決める、という分業がうまくいきます。特に転換に出来高が伴っているかは、必ず確認する価値があります。

まとめ

新値足の3行まとめ

・新値を更新したときだけ線が増える。横軸は時間ではない
・直近3本ぶんを打ち消す動きで転換する。だからだましが少ない
・その代償としてシグナルは遅い。天井と底は必ず取り逃がす

新値足の価値は、当たる確率の高さではなく「迷う回数を減らせること」にあります。横ばいの相場ではチャートが動かないので、そもそも判断する場面が来ません。

手を出しすぎてしまう自覚がある人ほど、この性質は効きます。一度、保有銘柄を新値足で表示してみてください。ローソク足では見えていた細かい上下が、きれいに消えているはずです。

※ 本記事はチャート分析手法の解説を目的としたもので、特定の銘柄の売買や投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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