主幹事証券会社とは、株式の引受を取り仕切る中心の証券会社です。IPOやPOで、上場企業と投資家をつなぐ役割を担います。

IPO投資をするなら、この言葉だけは押さえておく価値があります。主幹事は配分される株数が突出して多いため、当選確率が他の証券会社と比べて大きく変わります。

逆に言えば、主幹事の口座を持っていないと、その案件で当たる可能性はかなり低くなります。この記事では、主幹事の役割と調べ方、口座を選ぶ順番を解説します。

この記事でわかること

・主幹事証券会社と幹事証券会社の違い
・主幹事が担う4つの役割
・IPOの当選確率が主幹事で変わる理由
・主幹事の調べ方(どの開示のどこを見るか)
・共同主幹事・委託幹事の意味
・口座を作る順番の考え方

主幹事証券会社とは?まず結論から

主幹事証券会社(読み方:しゅかんじしょうけんがいしゃ)

企業が新しく株式を売り出すとき、証券会社が株式を引き受けて投資家に販売します。この引受を行う証券会社は複数社でチームを組みます。そのチームの中心となるのが主幹事証券会社です。

チーム全体を引受シンジケート団といい、参加する証券会社を幹事証券会社と呼びます。役割には明確な差があります。

立場 役割 配分株数
主幹事証券会社 全体の取りまとめ、価格決定、上場準備の支援 大部分
幹事証券会社 引受と販売に参加する 少ない
委託幹事(裏幹事) 幹事から株を回してもらって販売する ごく少ない

ここが投資家にとっての要点です。主幹事が引受株数の大部分を占め、残りを他の幹事証券が分け合います。1社あたりの配分量に大きな差が生まれます。

主幹事が担う4つの役割

役割① 上場準備の支援と審査

社内体制の整備、資本政策の助言、取引所の審査に向けた準備を数年がかりで支援します。上場できるかどうかに関わる立場です。

役割② 価格の決定

機関投資家の需要を聞き取り、想定価格から仮条件を決めます。ブックビルディングの結果をもとに公開価格を決定するのも主幹事の仕事です。

役割③ 株式の引受と販売

売れ残った場合は自ら買い取る義務を負います(買取引受)。リスクを負うからこそ、配分される株数も多くなります。

役割④ 上場後の株価の安定操作

オーバーアロットメントとシンジケートカバー取引を行い、需給の調整をします。上場直後の値崩れを防ぐ役割です。

役割②が投資家にとって重要です。仮条件が想定価格より上振れるか下振れるかは、主幹事が集めた機関投資家の需要を反映しています。プロの評価が可視化される最初の情報になります。

役割④も見逃せません。オーバーアロットメントが実施された案件では、主幹事が市場で株を買い戻す取引が入ることがあり、一定期間の株価の下支えになる場合があります。

IPOの当選確率が主幹事で変わる理由

理屈は単純です。当選本数は配分株数に比例します。

主幹事
配分が大部分
当選本数の絶対数が多い
最優先で口座を持つ
その他の幹事
配分は少量
当選本数が限られる
数を増やす価値はある

主幹事1社の当選本数が、幹事証券数社分を上回ることも珍しくない

ただし主幹事の口座だけで十分というわけでもありません。同じ案件でも証券会社ごとに別の抽選が行われるため、応募できる口座が多いほど機会は積み上がります。

優先順位をつけるならこうなります。

優先度 どんな証券会社か 理由
1 主幹事を務めることが多い会社 配分株数が最も多い
2 完全平等抽選の比率が高い会社 資金量に関係なく確率が同じ
3 前受金が不要な会社 手元資金を超えて申し込める
4 幹事に入ることが多い会社 応募口数を増やせる

2番目が資金の少ない人には特に効きます。申込株数比例の方式では最低単元の応募では確率が積み上がりませんが、完全平等抽選なら1口座1票です。詳しくはブックビルディングの記事で解説しています。

なぜ主幹事に多く配分されるのか(引受のリスク)

配分が偏るのは、優遇されているからではありません。売れ残りのリスクを負っているからです。

引受の方式 証券会社の義務 リスク
買取引受 株式をいったん自ら買い取って投資家に販売する 大きい
残額引受 売れ残った分だけ買い取る 中程度
募集の取扱い 販売を仲介するだけ。買取義務はない 小さい

IPOやPOの引受は、通常買取引受で行われます。つまり需要が集まらなければ、主幹事が自腹で抱えることになります。

ここから投資家として読み取れることがあります。主幹事は売れ残りを避けたいので、公開価格を強気に設定しすぎない動機があります。これがIPOの初値が公募価格を上回りやすい構造的な理由の一つです。

同時に、需要が弱い案件では仮条件が想定価格より下振れます。売り切るために価格を下げる判断です。仮条件の上下は、主幹事のリスク判断が数字になって出てきたものだと理解できます。

主幹事が上場審査で何を見ているか

主幹事は上場の数年前から企業に入り、体制を整えます。ここを通過した企業だけが上場できるため、内容を知っておくと銘柄の見方が変わります。

整備する領域 内容
内部管理体制 経理・監査・コンプライアンスの仕組みづくり
資本政策 株主構成、ストックオプションの設計、希薄化の管理
事業計画 成長の見通しと、その根拠の説明力
関連当事者取引 創業家との取引などの整理

2行目に注目してください。上場前に発行されたストックオプションの量は、上場後の希薄化として投資家に跳ね返ります。目論見書の新株予約権の記載で確認できます。

上場審査を通っているからといって、株価が上がる保証はありません。審査は「上場企業として最低限の体制があるか」を見るもので、投資として有望かを判定するものではないという点は押さえておいてください。

主幹事の調べ方

主幹事は必ず開示されています。見る場所は決まっています。

1

上場承認の発表を見る
上場の約1か月前

取引所が新規上場を承認した時点で公表されます。この時点で主幹事が分かります。

2

目論見書の「引受人」の欄を見る
最も正確な情報

引受証券会社の一覧と、それぞれの引受株数が記載されています。主幹事は先頭に書かれ、株数が最も多くなっています。

3

証券会社のIPO案件ページを見る
手早く確認できる

各社のIPOスケジュールページに主幹事・幹事の記載があります。日程も一緒に確認できます。

4

引受株数の比率を計算する
当選確率の目安になる

主幹事の引受株数 ÷ 全体の引受株数で、配分の偏りが数字で見えます。

4番目まで確認する人は少ないですが、主幹事の引受比率が高い案件ほど、主幹事の口座を持っているかどうかで結果が分かれます。目論見書に株数が明記されているので計算は簡単です。

なお、主幹事を務める証券会社は案件によって変わります。大手証券会社が中心ですが、ネット証券が主幹事を務めるケースも増えています。「この証券会社なら必ず主幹事」という固定はありません。

幹事の数から案件の性格を読む

引受シンジケート団に参加する証券会社の数も、情報になります。

幹事の数 読み取れること 個人の当選機会
多い(10社前後以上) 規模が大きい案件。幅広く販売する必要がある 応募先が多い
少ない(数社) 小型案件。主幹事だけで売り切れる規模 主幹事に集中する

幹事が少ない小型案件では、主幹事の口座を持っているかどうかがほぼ決定的になります。逆に幹事が多い大型案件は応募先が増えますが、IPOとしては吸収金額が大きく初値が跳ねにくい傾向があります。

つまり「当たりやすい案件は初値が上がりにくく、初値が上がりやすい案件は当たりにくい」という関係が、幹事の数からも見えてきます。両方を欲張るのではなく、どちらを狙うかを決めて口座を用意するのが現実的です。

共同主幹事と委託幹事の見方

呼び方 意味 投資家への影響
共同主幹事 複数社が主幹事を務める 当選機会が複数社に広がる
副幹事 主幹事に次ぐ位置づけ 配分は主幹事より少ない
委託幹事(裏幹事) 幹事から株を回してもらう 配分はごく少ないが応募はできる

共同主幹事の案件は、投資家から見ると有利です。主幹事級の配分を受ける証券会社が複数あるということなので、どちらかの口座があれば機会が得られます。

委託幹事は配分がごく少量ですが、応募自体はできます。当選確率は低いものの、応募口数を増やす意味はあります。委託幹事は上場承認時点では公表されず、後から発表されることがあるため、直前の情報も確認する価値があります。

POでの主幹事の役割

主幹事はIPOだけでなく、PO(公募・売出し)でも中心になります。役割は似ていますが、既に上場しているため内容が変わります。

項目 IPO PO
価格の決め方 需要申告をもとに公開価格を決定 市場価格から数%ディスカウント
上場審査の支援 数年がかりで行う 不要
株価の安定操作 オーバーアロットメント等 同様に実施される
当選しやすさ 当たりにくい 比較的当たりやすい

POでも主幹事の配分が最も多くなります。ただしPOはIPOより当たりやすいため、主幹事以外の口座でも配分を受けられることがあります。その代わり利幅はディスカウント分に限られます。

主幹事証券会社に関する注意点

① 主幹事の口座があっても当選するとは限らない

配分が多いだけで、抽選であることは変わりません。人気案件では主幹事でも落選します。

② 口座開設は承認前に済ませる

上場承認からブックビルディングまでは2週間程度です。口座開設に数日から2週間かかるため、承認を見てから動くと間に合いません。

③ 主幹事が良い案件とは限らない

大手が主幹事でも公募割れする案件はあります。主幹事の格と案件の質は別です。仮条件や吸収金額で判断してください。

④ 配分の一部は裁量配分になっている

抽選に回されるのは配分の一部で、残りは店頭での裁量配分というケースがあります。抽選比率は証券会社ごとに公表されているので確認できます。

主幹事証券会社に関するよくある質問

主幹事証券会社と幹事証券会社はどう違いますか?
主幹事は引受を取り仕切る中心の証券会社で、価格決定や上場準備の支援を担い、引受株数の大部分を配分されます。幹事証券会社は引受と販売に参加するだけで、配分される株数は少なくなります。
なぜ主幹事だと当選しやすいのですか?
配分される株数が最も多く、当選本数の絶対数が違うためです。同じ案件でも証券会社ごとに別の抽選が行われるので、配分が多い主幹事の抽選に参加できるかどうかで結果が大きく変わります。
主幹事はどこで確認できますか?
上場承認の発表と目論見書で分かります。目論見書の引受人の欄には、引受証券会社の一覧とそれぞれの引受株数が記載されており、主幹事は先頭で株数も最多です。証券会社のIPO案件ページでも確認できます。
共同主幹事とは何ですか?
複数の証券会社が主幹事を務める形態です。主幹事級の配分を受ける会社が複数あるため、投資家から見れば当選機会が広がります。どちらかの口座があれば応募できます。
委託幹事にも応募する価値はありますか?
配分はごく少量ですが応募はできるため、口数を増やす意味はあります。ただし当選確率は低くなります。委託幹事は上場承認時点では公表されず後から発表されることがあるので、直前の情報も確認してください。
主幹事の口座はいつまでに開設すればいいですか?
上場承認より前です。承認からブックビルディングまでは2週間程度しかなく、口座開設には数日から2週間かかります。主幹事を務めることが多い証券会社の口座は、あらかじめ用意しておくのが実務的です。
大手が主幹事なら初値は上がりやすいですか?
主幹事の規模と初値の上がりやすさは直結しません。判断材料になるのは吸収金額の大きさ、仮条件が想定価格から上振れたか下振れたか、同日上場の件数などです。主幹事の格だけで判断しないでください。
POでも主幹事は重要ですか?
配分が最も多いという点は同じです。ただしPOはIPOより当たりやすいため、主幹事以外の口座でも配分を受けられることがあります。その代わり利幅はディスカウント分に限られます。

まとめ

主幹事証券会社は、引受を取り仕切る中心の証券会社です。IPO投資では、主幹事の口座を持っているかどうかが当選機会を大きく左右します。

この記事のまとめ

・主幹事は引受を取り仕切り、株数の大部分を配分される
・価格決定と上場準備の支援も主幹事の役割
・当選本数の絶対数が違うため、当選確率が大きく変わる
・目論見書の引受人の欄で引受株数まで確認できる
・口座開設は上場承認より前に済ませておく
・主幹事の格と案件の質は別問題

あわせて読みたい:IPOとはブックビルディングとはPOとはロックアップとはオーバーアロットメントとは公募割れとは売出しとは

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