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現渡しとは

現渡し(読み方:げんわたし)

 

現渡しとは、信用取引の決済方法のひとつで、信用売りを決済するときに使う方法です。
品渡し(しなわたし)」と呼ぶこともあります。

もう少し具体的に説明すると、信用売り(空売り)している銘柄を決済するときに、現物株式を差し入れて信用売りの売建代金を受け取る方法となります。

信用取引には「反対売買」「現引き」「現渡し」の3つの決済方法がありますが、そのうち信用売りの決済方法は「反対売買」と「現渡し」になります。信用買いの場合は「反対売買」と「現引き」です。

反対売買とは、信用取引の建て玉とは反対の売買を行う取引のことで、信用売りの反対売買は買い戻しになります。
空売りのみをしている場合は反対売買による決済を行いますが、「つなぎ売り」などを行った場合は現渡しによる決済を使われることもあります。

 

現渡しメモ

・現渡しとは信用売りの決済方法のこと
・現物株式を差し入れて信用売りの売建代金を受け取る方法
・つなぎ売りなどを行った場合によく使われる決済方法

 

現渡しのやり方

現渡しのやり方は、信用売りしている銘柄の決済画面で現渡しを選択するだけです。

但し、現渡しを行うときに、決済する信用売りの売建玉と同数量の現物株式が必要となります。
売建玉に対して現物株式が不足している場合は現渡しを行うことはできません。

ほかに現渡しを行う際に覚えておきたいポイントとしては、次のポイントが挙げられます。

・現渡しの利益
・現渡しのタイミング

・現渡しの時間
・現渡しの手数料

それぞれ簡単に説明していきます。

現渡しの利益

現渡しの利益は「信用売りの売建代金+貸株料等諸経費」から「現物株式の取得費用」を引いた差額となります。

株価の変動により、それぞれ利益と損失が生じることになりますが、同じ銘柄を同じ数量だけ保有していれば相殺されるので、上記の計算方法で損益計算を行うことができます。

たとえば、1,000円で100株現物買い、1,200円で100株信用売りした場合は、次のように計算します。

(1,200円×100株)-(1,000円×100株)= 利益2万円
(わかりやすくするために貸株料等諸経費は省略)

差額2万円が現渡ししたときの利益となります。

但し、厳密には信用取引コスト(貸株料等諸経費)が日々かかるので、保有期間が長くなると利益は削られていくことになりますので注意も必要です。

現渡しのタイミング

現渡しのタイミングは「つなぎ売り」を行ったときに、予想に反して株価が上昇してしまったときや、予想以上に下落していつ下げ止まるかわからないようなときに行います。

ほかには株主優待をタダ取りするために「クロス取引」を行う場合などに使われます。

つなぎ売りでの現渡し

つなぎ売りとは、保有している銘柄が下落しそうなときに、保有株の値下がりリスクを回避するために信用売りする投資手法です。

たとえば、1,000円で現物株を買って、1,500円まで株価が上昇した場合は「500円の利益」になります。
ここで調整売りがありそうだと思ったら1,500円で信用売りをします。
そうすることで、万一株価が下落して保有株が値下がりしても、その分を信用売りの利益でカバーできるので500円の利益は確保したまま株を保有できます。

調整が終わったと判断できれば信用売りを反対売買で決済し、現物株をそのまま保有すれば利益を最大限伸ばすことができます。

ただ、下落はいつ終わるかわからないですし、予想に反して株価が上昇してしまうようなケースもあります。

たとえば、予想に反して1,500円→1,600円→1,700円といったように上昇を続ければ、現物株の利益を伸ばすことはできますが、信用売りで損失が膨らんでしまいます。また、1,500円→1,400円→1,300円といったようにいつ下げ止まるかわからないような場合は、信用売りの利益を伸ばすことはできますが、現物株式で損失が膨らむことになります。

そういうときに最低限の利益を確保しつつ(または最低限の損失に抑えつつ)決済したいときに現渡しが使われます。

一方を損切りして、もう一方の利益を伸ばすこともできますが、損切り後に逆に動いてしまうと大きな損失を被るリスクがあります。

クロス取引での現渡し

クロス取引とは、買い注文と売り注文を同時に行うことをいいます。
キャピタルゲインは狙わずに、株主優待のみを目的とする場合は、クロス取引を行って優待をほとんどタダで獲得することができます(厳密には売買手数料や信用コストがかかります)。

クロス取引の場合、現物株式の買い注文と信用売りの注文を同時に行うので、株価がいくら動いても損益はゼロのままです。
そのため、権利落ち日に現渡しすることで、ほとんどタダで株主優待を受け取ることができます。

現渡しの時間

現渡しの発注できる時間は、証券会社によって異なります。
また、発注時間によっては当日ではなく翌営業日の約定分扱いとなることもあります。

取引時間中に行った注文は即時に決済されますので取り消しはできません。
取引時間外に行われた注文についても、証券会社によっては取り消しができないので注意しましょう。

現渡しの手数料

現渡しの手数料は無料となっているところが多いです。
但し、一部の証券会社では手数料がかかるので、利用する証券会社で確認するようにしましょう。

 

現渡しメモ

・現渡しの利益は「信用売りの売建代金+貸株料等諸経費」から「現物株式の取得費用」を引いた差額
・現渡しはつなぎ売りを行ったときに、株価が上昇したり、いつ下げ止まるかわからないときに行う
・株主優待をタダ取りするためにも使われる決済方法
・現渡しの注文は取り消しできないこともあるので注意が必要

 

現渡しのメリット

現渡しするメリットは次のとおりです。

・値下がりリスク(値上がりリスク)を回避できる
・株価変動リスクを回避できる
・手数料を節約できる

値下がりリスク(値上がりリスク)を回避できる

現渡しすることで現物株式と信用売りの利益と損失を相殺することができます。
ですので現物株式の値下がりリスクや信用売りの値上がりリスクを回避することができ、最低限の利益を確保したり、最小限の損失に抑えることができます。

株価変動リスクを回避できる

現渡しは現物株式と信用売りを同時に決済することができます。
それぞれ決済すると株価の変動によって損を出してしまうこともありますが、現渡しの場合は同時に決済されるので株価変動リスクを受けることはありません。

手数料を節約できる

信用売りと現物株式をそれぞれ売買した場合、それぞれで手数料が発生することになります。

現渡しの場合は手数料無料となっていることも多いので、取引手数料分を節約することができます。

ただ、一部の証券会社では現渡しの手数料が発生したり、信用取引手数料が無料となっているケースもあります。
手数料の節約に関しては利用する証券会社によって異なるので、実際に売買する証券会社の手数料を確認してみましょう。

現渡しの注意点

現渡しの注意点やデメリットについても確認しておきましょう。

・現渡しできないケースもある
・NISA口座保有分は現渡しの対象外

現渡しできないケースもある

現渡しできないケースはいくつかあります。

・現物株式を保有してない
・現物株式の売却注文を出している
・余力が不足してしまう
・増資等の公表から発行価格決定までの間に新規売りをした

など、上記のような場合は現渡しできない場合もあります。
知らず知らずのうちに、いずれかに該当してしまうこともあるので、この点は気をつけておきたいポイントです。

NISA口座保有分は現渡しの対象外

NISA口座で保有している現物株式は現渡しで使うことはできません。

NISA口座で保有する株の値下がりリスクを回避するために信用売りをするケースもあると思いますが、その場合は現渡しはできないので予想に反して値上がりしてしまうと信用売りで損失が出てしまうだけです。

現渡しも視野に入れて取引する場合、この点は注意したいポイントになります。

 

現渡しメモ

・現渡しは利益と損失を相殺できるので値下がりリスク(値上がりリスク)を回避できる
・また、現物株式と信用売りを同時に決済できるので株価変動リスクを回避することもできる
・NISA口座の現物株式は現渡しには使えない
・ほかにも現渡しできないケースがいくつかあるので注意も必要

 

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