転換社債型新株予約権付社債とは

転換社債型新株予約権付社債(読み方:てんかんしゃさいがたしんかぶよやくけんつきしゃさい)

転換社債型新株予約権付社債とは、簡単にいうと一定の条件を満たせば株式に転換できる社債のことです。「株式に転換できる」とは、あらかじめ決められた条件で発行企業の株式に転換することができるという意味です。

転換社債型新株予約権付社債は「転換社債」または「CB」と呼ばれます。
CBとは「Convertible Bond」の略称で「Convertible=転換」「Bond=社債」という意味の英語です。つまり日本語で”転換できる社債”ということになります。

一般的に社債というと「普通社債」を指し、投資家は社債を購入することで企業に対してお金を貸して利息を受け取る・償還日には額面金額が償還されるというものです。

転換社債型新株予約権付社債とは何かをより理解するためにも、普通社債や新株予約権付社債との違いを把握しておくことは大切です。

転換社債型新株予約権付社債と普通社債の違い

転換社債型新株予約権付社債は普通社債と同じように、

・定期的に利息を受け取ることができる
・償還日に額面金額が払い戻される

という2つの点は普通社債も転換社債型新株予約権付社債も同じですが、『一定の条件を満たせば株式に転換できる』点は普通社債との大きな違いとなっています。

条件については発行企業によって異なり、利率0%という発行条件の転換社債型新株予約権付社債もあります。利率が0%の場合*は利息は受け取れません。

※ゼロクーポン転換社債について
発行企業の中には利息を付けない代わりに額面より低い価格で発行する転換社債もあり、これをゼロクーポン転換社債といいます。ゼロクーポン転換社債は、利払いがなくて利息相当分を割り引いた価格で発行されます。

また、発行する企業が倒産した場合は額面金額が償還されないケースもあります。

転換社債型新株予約権付社債と新株予約権付社債

正式名称は転換社債型新株予約権付社債ですが、会社法においては「新株予約権付社債」と規定されています。(2005年の会社法制定以降、株式性を有する社債権を新株予約権付社債と総称)

転換社債型新株予約権付社債は新株予約権付社債の一種です。

新株予約権については【新株予約権とは何か?わかりやすく解説】をご参考下さい。
⇒企業が資金調達するために発行する債券のことを指して社債といいますが、社債自体については【社債とは何か?わかりやすく解説】をご覧いただければと思います。

転換社債型新株予約権付社債メモ

・転換社債型新株予約権付社債とは、一定の条件を満たせば株式に転換できる社債
・転換社債型新株予約権付社債は「転換社債」や「CB」と呼ばれるのが一般的
・普通社債と同じく定期的に利息を受け取ることができ、償還日に額面金額が払い戻される(発行企業の条件によっては受け取れない場合も有)
・普通社債との違いは株式転換の可否
・新株予約権付社債との違いは株式転換の可否と販売形式

転換社債型新株予約権付社債における乖離率

ここからは転換社債型新株予約権付社債=転換社債として表記を統一し、解説していきます。

転換社債における乖離率(かいりりつ)とは、「理論価格」と実際の市場の転換価格(時価)との差のことをいいます。理論価格は「パリティ」と呼ばれます。(パリティ=転換社債の理論価格のこと)

株式投資においてはPERPBRなど割安・割高を判断する指標がありますが、パリティを用いることで転換社債が割高・割安かの判断材料になるといわれています。

パリティの計算式は次のようになっています。

(株価 ÷ 転換価額) × 100(円) = パリティ(理論価格)

例えば、株価1,000円・転換価額800円の場合のパリティは

(1,000円÷800円)×100=125円

ということになります。

ただ、転換社債の価格は市場において需要や株価・金利の動向等によって変動するため、必ずしもパリティどおりの価格になっているというわけではありません。

その差が乖離率です。

算出方法は以下の通りです。

( (転換社債の時価 - パリティ) ÷ パリティ ) × 100(%) = 乖離率

例)
転換社債時価が130円、パリティが125円の場合の乖離率は

( (130円-125円)÷125円 )×100(%)=4

つまり乖離率は4%となります。(転換社債の時価<パリティの場合、乖離率はマイナスとなる)

転換社債メモ

・転換社債の理論価格のことを「パリティ」という
・転換社債価格は市場動向で変動するため、必ずしもパリティの算出結果と一致しない
・パリティと実際の市場の転換価格(時価)との差を乖離率(転換社債の乖離率)という

転換社債のメリット・デメリット

転換社債における投資家のメリット・デメリットは主に以下のように考えられます。

転換社債による投資家のメリット「キャピタルゲインが得られる」

株価が転換価格(行使価格)を上回ったら、株式に転換して市場で売却することでキャピタルゲイン(値上がり益)を得ることができます。

例えば、転換社債の一例として

・利息:1%
・期間:4年
・転換価格:1,000円

という発行企業A社があります。

現在の株価が800円の場合、将来株価が1,000円以上になると転換価格との差額がキャピタルゲイン(値上がり益)となります。

株価が上昇しなかった場合、4年後に償還されるので『期間4年間1%の社債を購入した』ということになります。

転換社債による投資家のメリット「元本割れリスクがない」

株価が転換価格より上回ることがない場合でも、債券として保有し続けることで社債の利息(クーポン)を受け取ることができます。

株式のような値下がりリスクは無く、元本割れのリスクヘッジをしつつ株価の上昇局面で利益が狙えるというのは投資家にとってメリットの1つだといえます。

転換社債による投資家のデメリット「ローリターン」

基本的に同じ発行企業の普通社債よりも利息は低くなるため、株価が上昇しない場合のリターンが普通社債よりも低くなってしまう点はデメリットとして挙げられるかと思います。

転換社債による投資家のデメリット「コールオプション条項」

転換社債を発行する企業の中には、コールオプション条項が付けられている場合があります。

コールオプション条項とは、簡単にいうと株価が一定価格を上回った場合に発行企業が任意に額面で償還できるというもので、これを行使されると投資家はキャピタルゲイン(値上がり益)を得ることができなくなる点はデメリットになるといえます。

転換社債による発行企業(発行体)のメリット・デメリット

発行企業側のメリット・デメリットは、それぞれ以下のように考えられます。

 メリット ・普通社債よりクーポンが低いため利払いを抑えられる
・市場の環境にも左右されるが、ゼロクーポン転換社債の発行の場合、スムーズな資金調達が可能
 デメリット ・将来的に株式に転換されることによって生じる株主利益の希薄化に投資家が嫌気をさして株価が下落するリスク
⇒転換社債発行の公表で、その発行企業の株価が下落する背景には、転換社債を発行する企業の株式を保有する既存株主が株主利益の希薄化を懸念して株式を売りに出していることが挙げられます。

転換社債メモ

・投資家側の主なメリットはキャピタルゲインが得られ、元本割れのリスクがない
・投資家側の主なデメリットは株価が上昇しない場合のリターンが普通社債よりも低くなることやコールオプション条項
・発行企業側の主なメリットは利払いを抑えられ、ゼロクーポン発行の場合スムーズな資金調達が可能
・発行企業側の主なデメリットは、将来的に株主利益が希薄化するリスクによる既存株主からの批判

転換社債による株価への影響

転換社債による株価の動向は様々だと言えます。

例えば、増資などによって発行済株式が増えると株主の権利は下がり、いわゆる株式の希薄化となります。メリット・デメリットの項目でも触れたように、希薄化によって株価が下落するケースは大いにあるものです。

逆に転換社債による株価の上昇においては、かなり以前の実例ですが【9984】ソフトバンク・グループが1996年に発行した転換社債によるリターンは、大きなインパクトを受けた投資家も多いのではないでしょうか。

発行された転換社債の転換価格は8,000円台でしたが、以下の表をご覧下さい。

 年月日 株価(高値) 株価(終値)
2000年2月15日 198,000円 169,000円
2000年2月14日 170,000円 169,000円
2000年2月10日 150,000円 148,000円
2000年2月9日 135,000円 134,000円
2000年2月8日 138,000円 125,000円
2000年2月7日 138,000円 134,000円
2000年2月4日 139,000円 133,000円
2000年2月3日 124,000円 124,000円
2000年2月2日 112,000円 103,000円
2000年2月1日 111,000円 106,000円
2000年1月31日 105,000円 105,000円
2000年1月28日 99,900円 99,900円
2000年1月27日 95,100円 94,900円
2000年1月26日 93,200円 92,900円

2000年1月後半から株価は上昇し続け、2000年2月15日には高値198,000円を付けています。

つまり、転換価格が8,000円台なので20倍以上となったということです。
ITブームなど様々な背景があったかと思いますが、端的に転換社債のメリットを大いに象徴するケース例だと言えます。

転換社債型新株予約権付社債に関してよくある質問

投資家にとって、普通の株式投資と比べて何が有利なのですか?
最大の利点は「下値不安が限定的であること」です。
株式投資は会社が倒産しない限り、最悪でも「社債としての元本(額面金額)」が返ってくるため、株価が暴落しても無価値にはなりません。利益の「上(アップサイド)」は株と同じように狙える一方で、「下(ダウンサイド)」が守られている点が有利です。
逆に、CB投資のデメリットやリスクは何ですか?
主に以下の3点です。
利回りが低い: 株式に換えられる「権利」がついている分、普通の社債に比べて利息(クーポン)が非常に低く、0%(ゼロクーポン)であることも多いです。
発行体の倒産リスク: 社債である以上、会社が倒産すれば元本は戻りません。
流動性が低い: 普通の株ほど頻繁に売買されないため、売りたい時に売れない可能性があります。
なぜ「CB発行」のニュースが出ると、その会社の株価が下がることが多いのですか?
「将来的な株式の希薄化(薄まること)」が嫌気されるからです。 CBが株式に転換されると、発行済み株式数が増え、1株あたりの利益(EPS)が減ってしまいます。また、後述する「裁定取引(アービトラージ)」による空売りが入ることも、株価押し下げの要因となります。
CBの「転換価額」とは何ですか?どうやって決まりますか?
株式に交換する際の「1株あたりの価格」のことです。
通常、CB発行発表時の株価に5%〜10%程度の「アップ(プレミアム)」を乗せて設定されます。例えば株価1,000円の時に、転換価額1,100円といった形で決まります。株価がこの1,100円を超えて初めて、株式に転換するメリットが生まれます。
利息が0%の「ゼロクーポンCB」を、なぜ投資家は買うのですか?
利息ではなく「株価上昇のオプション価値」に期待しているからです。 投資家は「最悪でも元本は保証される」という保険(プットオプション)をかけながら、手数料なしで「将来の爆発的な株価上昇」に乗れるチケットを買っているような状態です。そのため、高い成長が見込まれる企業のCBは利息がなくても人気化します。
企業側が、普通の株や社債ではなく「CB」で資金調達する狙いは?
「低コスト」で資金を調達し、かつ「返済不要」にしたいからです。 普通の社債より利息を安く抑えられ、さらに株価が上がって株式に転換されれば、借りたお金を返す必要がなくなります(自己資本に変わる)。企業にとっては非常に効率の良い資金調達手段といえます。
機関投資家が行う「CBアービトラージ(裁定取引)」とは何ですか?
CBを買いながら、同時にその会社の「現物株」を空売りする手法です。 株価が下がってもCBの元本保証で守られ、株価が上がっても空売りの損失をCBの転換益で相殺しつつ、価格差(歪み)から収益を抜きます。CB発行発表直後に株価が大きく売られるのは、このアービトラージ勢による機械的な空売りが一因です。
個人投資家でも、ネット証券などで簡単にCBを買えますか?
実は、個人投資家が直接CBを買う機会は非常に限られています。 多くの日本企業が発行するCBは「ユーロ円CB」という海外市場向けの形式が多く、これらは機関投資家しか買えません。個人がCBに投資したい場合は、CBを組み込んだ投資信託(CBファンド)を通じて投資するのが一般的です。
保有しているCBの企業が「繰上償還(コール条項)」を発動したらどうなりますか?
「強制的に元本で返される」か「急いで株式に転換させられる」かの二択を迫られます。
株価が大幅に上がった際、企業側が「もう利息を払いたくない、資本に組み入れたい」として償還を早めることがあります。投資家にとっては、さらに値上がりするチャンスを強制終了させられる「呼び出しリスク」となります。

スポンサーリンク
おすすめの記事