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貸株注意喚起とは

貸株注意喚起(読み方:かしかぶちゅういかんき)

 

貸株注意喚起とは、証券金融会社が貸借取引に必要な株式を調達できなくなるおそれがある場合に、証券会社や投資家に対して注意を促すために公表するものです。

わかりやすくひと言で説明すると空売り(信用売り)に関する注意喚起のことです。

信用取引には「一般信用取引」と「制度信用取引」がありますが、そのうち制度信用取引では、必要に応じて証券金融会社が証券会社等に株式や資金の貸し付けを行っています。この取引を「貸借取引」といいます。

ですが、空売りの増加によって、貸借取引に必要な株式が不足するおそれが出てくることもあります。
そういう状況になると逆日歩の発生や空売りが禁止されるリスクが出てくるので、証券金融会社は証券会社や投資家に対して通知・公表を行って注意を促すことがあります。これが「貸株注意喚起」です。

証券金融会社は貸借取引を主な業務としている金融会社のことで、現在は日本証券金融株式会社(日証金)のみが現存しています。

また、空売りの増加以外でも、個別の理由により株式の調達が困難になるおそれのある銘柄については貸株注意喚起が出されることがあります。
たとえば、買い集め等により流動性が著しく低下するおそれがある銘柄や、急激な株価の変動などによって貸借取引が急増するおそれがある銘柄などです。

貸株注意喚起銘柄とは

貸株注意喚起銘柄とは、貸株注意喚起の対象になった銘柄のことをいいます。

つまり、貸株注意喚起銘柄は逆日歩の発生や空売りが禁止になるリスクのある銘柄となります。

但し、貸株注意喚起は注意を促すものであり、規制ではありません。

それでは貸株注意喚起が行われるとどうなるのかを確認していきましょう。

 

貸株注意喚起メモ

・貸株注意喚起とは空売りに関する注意喚起のこと
・貸し付ける株の調達が困難になるおそれがある場合に通知・公表が行われる
・貸株注意喚起の対象となった銘柄を「貸株注意喚起銘柄」という
・貸株注意喚起は注意を促すものではあるが規制ではない

 

貸株注意喚起銘柄指定になるとどうなるのか

貸株注意喚起は注意を促すために行うものですが、それ自体は規制等ではないので、貸株注意喚起中でも取引に影響を与えることはありません。

ですが、将来的には取引に影響を与えることもあります。

貸株注意喚起は今後の信用取引の貸株が不足するおそれを意味しており、状況が改善されないと逆日歩や規制の対象になるおそれがあるからです。

ここでは、以下の3つのポイントについて説明したいと思います。

・逆日歩が発生するおそれがある
・規制の対象になるおそれがある
・貸株注意喚起の解除(取消)

また、取引に影響はなくても株価に影響を与えることはあります。
この点については後述する「貸株注意喚起が株価に与える影響」で説明しています。

逆日歩が発生するおそれがある

貸株注意喚起で状況が改善されない場合、証券金融会社は貸借取引に必要な株を調達できず、株不足になってしまうことがあります。そういう状況になると証券金融会社は機関投資家などから株式を借りて不足を解消することになります。

このときに調達費用として発生する1日あたりのコストが「逆日歩(品貸料)」となります。

逆日歩は、売り方が負担し、買い方が受け取る仕組みとなっています。
つまり、信用取引で空売りしている人は、逆日歩によって支払うコストが増加することになります。

規制の対象になるおそれがある

逆日歩のほかには、規制の対象になるおそれもあります。

具体的には、

・貸借取引の制限・停止
・増担保規制

などがあります。

貸借取引の制限・停止は、制度信用取引の新規売りや買い方の現引きなどを一部または全部を停止するものです。信用売りのみを指す場合は「貸株申込制限・貸株停止」ともいいますが、貸株停止となった場合は新規売りはできなくなります。新規売りできなくなった状態を「売り禁」ともいいます。

増担保規制は、通常よりも多くの委託保証金(担保)を必要とする措置のことです。
信用取引では、委託保証金として現金や代用有価証券を証券会社に差し入れて取引を行います。このときに必要な委託保証金は「委託保証金率」によって決まっていますが、増担保規制が実施されると委託保証金率が引き上げられ、通常よりも多くの委託保証金が必要になります。

貸株注意喚起の解除(取消)

貸株注意喚起は逆日歩の発生や規制の対象になるリスクがあります。

ですが、これはあくまで貸株注意喚起後に状況が改善されない場合です。

貸株注意喚起で状況が改善された場合は貸株注意喚起の取消が行われます。
また、規制の対象になってしまった場合などは、状況の改善によりそれらの措置が解除されることになります。

 

貸株注意喚起メモ

・貸株注意喚起銘柄に指定されても取引に影響を与えることはない
・但し、状況が改善しない場合は逆日歩の発生によりコストが増加することもある
・他には信用規制の対象になって新規売りが停止になったり委託保証金が通常よりも多くなったりする

 

貸株注意喚起が株価に与える影響

貸株注意喚起は取引を制限するものではないので、単体ではそこまで大きな影響はありません。
ですが、今後の株不足により逆日歩の発生や信用売りの停止といったリスクがあります。

そのため、銘柄の状況次第で株価に影響を与えるケースもあります。

たとえば、逆日歩が発生すると短期的に株価は上昇しやすい傾向にあります。

理由は買い圧力が強くなりやすいからです。

・売り方は逆日歩を支払う必要あり、コストを避けるために買い戻しをするので踏み上げ相場になりやすいです。
・買い方は逆日歩を受け取ることができるので買いの動きが強まりやすいです。

上記のように逆日歩の発生により買いが強くなるので株価も上昇しやすくなります。
ですが、株不足が解消されると再び売り圧力が強まり急落するようなケースもあります。

次に信用売りの停止についてですが、これもケースバイケースです。

・株価が上がるケース
・株価が下がるケース

それぞれ確認していきましょう。

株価が上がるケース

株価が上昇しているときに信用売りが停止すると当然売り圧力は弱くなります。
そうなると売り方は利益確定や損失を拡大させないように買い戻しに動くので、いわゆる「踏み上げ相場」になりやすいです。
ですから短期的に株価は上がる傾向にあります。

ですが、新規売りは停止されているので、ある程度買い戻しが進むと信用売りは減少して買い戻しの動きは弱くなります。
そうなると次は買い方の利益確定売りが入ることになり、株価は下落しやすくなります。

株価が下がるケース

悪材料などで株価が急落しているような銘柄の場合は、新規売りが停止されても下げ止まらないおそれがあります。
新規売りがない分、売り圧力が弱まる可能性はありますが、悪材料があるので信用買いや現物買いによる投売りもあります。
そのため、ダラダラと株価を下げ続ける可能性もあります。

このように貸株注意喚起後は、様々な要因で株価が上下することもあります。
ですからその銘柄の状況を見定めてあらゆることを想定して取引を行うようにしましょう。

 

貸株注意喚起メモ

・貸株注意喚起自体はそれほど大きな影響はないが、銘柄の状況次第で株価に影響を与えるケースもある
・逆日歩の発生や新規売りの停止は踏み上げ相場も期待できるので短期的には上昇しやすい
・ただ、その後は急落する可能性もあるので注意も必要

 

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