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貸株とは
貸株(読み方:かしかぶ)
貸株とは、保有している現物株式を証券会社に貸し出すことで、貸株金利を受け取ることができるサービスです。貸株サービスともいいます。
株式を借りた証券会社は、その株式を他の投資家に貸し出すことで貸株料を受け取り、株を借りている投資家に対して貸株金利を支払います。
貸株サービスは貸株金利を受け取れるメリットはありますが、株を貸し出すと株主の権利も移転されるので、貸株したままだと「株主優待」や「配当金」を受け取れないデメリットもあります。
ただ、一時的に貸株を解除して権利を優先させることもできるので回避することはできます。
詳細は後述しますが、貸株金利を受け取りつつ、株主優待も受け取りたい場合は各証券会社で設定を行うようにしましょう。
信用取引の貸株
単に「貸株」という場合、信用取引で空売りするために証券会社から借りる株を指していることもあります。
信用取引では、買い方は融資を受けてそのお金で株を買い、融資に対して金利を支払います。
売り方は証券会社から株を借りてその株を売り、借りた株に対して貸株料を支払うことになります。
・貸株サービスは保有している現物株式を貸し出すもの
・信用取引の貸株は取引をするために借りるもの
「貸す」か「借りる」かという大きな違いがあるので注意しましょう。
また、貸株金利は貸株サービスで受け取れる「収益」ですが、貸株料は信用取引で株を借りたことに対して支払う「コスト」になります。
この記事では「貸株サービス」を中心に説明しています。
貸株メモ
・単に貸株という場合は信用取引で空売りするために借りる株を指すこともある
・貸株サービスは株を貸し出すと株主の権利も移転される
貸株金利とは
貸株金利とは、貸株サービスで証券会社に株式を貸し出すことで受け取れる金利のことです。
貸株金利は各証券会社でそれぞれ設定されているので、同一銘柄であっても金利が異なることがあります。他にも個別銘柄によって異なる金利となっており、年率0.1%程度の銘柄もあれば、年率10%を超える銘柄もあります。
ですから貸株サービスを利用する場合は、自身が利用している証券会社で確認するようにしましょう。
次は貸株金利のシミュレーションをする際の計算方法を確認していきましょう。
貸株金利の計算方法
貸株金利のシミュレーションをする場合、日々の貸株金利を算出し、それに日数をかけて計算していきます。
貸株数量×銘柄の時価×銘柄ごとの貸株金利÷365=日々の貸株金利
日々の貸株金利×貸株日数=貸株金利の合計額
日々の貸株金利を算出するときは「銘柄の時価」で計算することになります。
銘柄の時価は当日の終値または最終気配値となっているので変動する可能性があるものです。
そのため、シミュレーションで正確な貸株金利を算出することはできません。
あくまで上記の計算は目安を知るための計算方法となります。
貸株金利メモ
・貸株金利は各証券会社がそれぞれ設定している
・個別銘柄によって異なる金利になっていることもある
貸株のメリット
貸株サービスのメリットについて説明していきます。
・貸株金利を受け取ることができる
・保有銘柄を有効活用できる
・株主優待や配当金の取得を優先することができる
貸株金利を受け取ることができる
貸株サービスの大きなメリットは、貸株金利を受け取れるところです。
簡単に貸株サービスを「利用しない場合」と「利用した場合」で比較してみましょう。
貸株しない場合 | 貸株した場合 |
株主優待 配当金 値上がり益 合計3つの収益が狙える |
株主優待 配当金(配当金相当額) 値上がり益 貸株金利 合計4つの収益が狙える |
貸株をしない場合、狙える収益は最大で3つです。
ですが貸株をすると最大4つの収益を狙うことができます。
収益を1つ増やすことでより効率的に資産運用を行うことができます。
保有銘柄を有効活用できる
また、貸株サービスは保有銘柄を有効活用できるというメリットもあります。
・将来の値上がり益を見越して長期保有目的で買った株
・過去に買った株で塩漬け状態にある株
こういった株は本来なら寝かせておくだけですが、貸株サービスを利用することで収益を生み出すことができます。
但し、株主優待の長期保有(継続保有)に対して特典が付く銘柄の場合、貸株サービスを利用することで特典が付かなくなる可能性もあるので注意が必要です。
詳細は貸株のデメリットで説明しています。
株主優待や配当金の取得を優先することができる
貸株サービスで株式を貸し出す場合、名義や権利等も移転されることになり、株主優待や配当金を受け取る権利が無くなってしまいます。
ですが、この点については株主優待や配当金の取得を優先することもできます。
株主優待・配当金自動取得サービスとも呼ばれるものですが、これにより権利確定日にあわせて貸株を一時的に解除し、自動的に株式を返却してくれるので株主優待や配当金を受け取る権利を得ることができます。
ですから普段は貸株サービスで貸株金利を受け取りつつ、株主優待や配当金を受け取ることも可能です。
優先設定にはいくつか種類があり、証券会社によって呼び名が違ったり、内容が異なる場合もあります。
貸株金利優先
貸株金利優先の場合、貸株金利を優先するので貸株は解除されず、株主優待や配当金の権利を得られません。
但し、配当金については「配当金相当額」として証券会社より支払われます。
株主優待優先
株主優待優先の場合、各証券会社が確認している情報元に優待情報がある場合は、貸株は解除されて株主優待の獲得ができます。実際に株主優待がある場合でも情報元に優待情報が無い場合や、株主優待が無い場合は解除されません。
解除されない株式の配当金については「配当金相当額」として証券会社より支払われます。
株主優待、配当金優先
株主優待、配当金優先の場合、各証券会社が確認している情報元に優待情報がある場合や配当情報がある場合は貸株が解除されて権利を獲得できます。
但し、株主優待情報がなく、予想配当も0円の場合などは解除されません。
権利取得優先
株主優待の有無にかかわらず、権利確定日前に必ず貸株を解除する設定です。この場合は株主優待と配当金、両方を受け取ることができます。
貸株金利優先と株主優待優先の2つしかない場合もあるので、自身が利用する証券会社で確認して利用するようにしましょう。
また、各証券会社が確認している情報元に情報がない場合は解除されないこともあるので注意も必要です。
配当金相当額についても、通常の配当金とは税金面で違いがあるので注意が必要です。
税金については次に説明するデメリットをご覧ください。
貸株メモ
・そのため普段は貸株金利を受け取りつつ、株主優待や配当金も受け取れる
・但し、優先できる内容は証券会社によって異なるケースがある
貸株のデメリット
貸株サービスにはメリットだけでなくデメリットも存在します。
・長期保有特典が付かない可能性がある
・NISA口座で保有している株式は対象外
・信用リスクがある
・貸株金利や配当金相当額の税金
長期保有特典が付かない可能性がある
株主優待には、継続保有や長期保有によって特典が付く銘柄もありますが、貸株サービスを利用すると特典を受けられなくなる可能性もあります。
権利確定日のみ株主名簿を確認するケースなら、株主優待の優先設定をしておけば問題ありません。
ですが、まれに任意の日に株主名簿を確認するようなケースもあります。
何度か説明している通り、株を貸し出しているときは権利も移転されているので、このときに確認されると株式を手放したという扱いになってしまうため、継続保有や長期保有の特典を受けることができなくなるのです。
そのため、継続保有や長期保有の特典を目的に株を買った場合、その株は貸株せずに保有しておくのが良いでしょう。
NISA口座で保有している株式は対象外
長期保有銘柄についてはNISA口座を活用される方も多いと思います。
ですが、NISA口座で買った株式は貸株サービスの対象外となります。
貸株にすることも考えて買う場合は、NISA口座以外で買うようにしましょう。
信用リスクがある
信用リスクとは企業の倒産等で債務不履行が起こる可能性です。
有価証券や預入金は、証券会社が破綻した場合でも顧客に戻せるように、自社の資産と区別して管理することが法律で義務付けられています。
ですが、貸株サービスで貸した株は対象にはならないので、証券会社が倒産などすると株式が返却されない場合もあります。
貸株金利や配当金相当額の税金
貸株金利や配当金相当額の税金は「雑所得」となります。
ですから総合課税として他の所得と合算されるため、原則として確定申告が必要になります。
但し、年収2,000万円以下の給与所得者の方で、給与や退職所得以外の所得が年間20万円以下の場合は確定申告は不要です。
総合課税は最大50%を超える税率になりますので、貸株金利や配当金相当額、給与所得等によっては大きな税負担があります。
一方で株式等の譲渡損益や配当金(源泉徴収税で済ませる場合)の場合は20.315%の税金で済みます。
また、株式等の損失と配当金は損益通算ができたり、配当金は配当控除を使えたりしますが、貸株金利や配当金相当額ではそういうことはできません。
大きな税負担の可能性や損益通算ができない点などは大きなデメリットになると思います。
少しでも負担を減らしたりしたい場合は、配当金を優先設定したり貸株解除をして、配当金相当額ではなく配当金として受け取るようにするといいでしょう。
貸株メモ
・NISA口座で保有している銘柄は貸株対象外
・証券会社の倒産などによって貸株が返却されないこともある
・貸株金利や配当金相当額は雑所得扱いで総合課税
・そのため税負担が大きくなる可能性もある