塩漬けとは、購入した株が値下がりし、含み損を抱えたまま売るに売れなくなった状態のことです。その銘柄を塩漬け株といいます。

多くの人が「売らなければ損は確定しない」と考えて放置します。しかし、それは正確ではありません。

この記事では、塩漬けが本当に失わせているものと、4つの対処法を解説します。

この記事でわかること

・なぜ売れなくなるのかという心理の仕組み
・放置している間に失っているもの
・4つの対処法とそれぞれが向く場面
・損出しをするときの実務的な注意
・塩漬けを作らないための予防策

塩漬けとは

塩漬け(読み方:しおづけ)は、食材を長期保存する調理法にたとえた言葉です。

典型的な流れ
① 短期のつもりで買った
② 予想と逆に下がった
③ 「もう少し待てば戻る」と損切りを見送る
④ さらに下がる
損切りできる金額を超えてしまい、動けなくなる

③の判断が分かれ目です。損切りできる金額のうちに決断できるかどうかで、その後がまったく変わります。

なぜ売れなくなるのか

ここにはいくつかの心理が重なっています。

心理 中身
損失を確定させたくない 売らなければ「まだ負けていない」と思える
買値を基準にしてしまう 「1,000円で買ったから1,000円に戻るまで」と考える
判断の誤りを認めたくない 売却は「間違いだった」と認める行為に感じられる
すでに払ったコストが惜しい 回収できない損失に引きずられて判断が歪む

2行目がとくに重要です。市場はあなたの買値を知りません。1,000円で買ったという事実は、今後の株価に一切影響しません。

塩漬けの本当のコスト

ここがこの記事でもっとも大切な部分です。「売らなければ損は確定しない」という考え方には、抜けている視点があります。

失っているのは「そのお金でできたこと」

100万円で買った株が50万円になり、5年間放置した場合

・含み損 50万円
・その50万円を年5%で運用できていたら → 5年で約14万円
→ 見えている損失のほかに、機会損失が積み上がっています

※ 年5%は説明のための仮定であり、運用成果を保証するものではありません。

もうひとつのコストが「意識を奪われること」です。

塩漬け株を抱えていると
・毎日その株価を確認してしまう
・新しい投資機会に資金を回せない
・「あれさえなければ」と判断が引きずられる
→ 資金だけでなく、時間と判断力も拘束されます

4つの対処法

対処法 向いている場面
① 損切りする 買った理由が完全に崩れている
② 損出しで税金を取り戻す その年に他で利益が出ている
③ 配当・優待で回収する 財務が健全で配当が続いている
④ 保有し続ける 買った理由がまだ生きている場合に限る

選ぶ基準はひとつです。「いま同じ価格でこの株を買うか」と自問してください。買わないなら、持ち続ける理由もありません。

対処法① 損切りする

もっとも単純で、もっとも実行が難しい方法です。

得られるもの

・資金が戻り、次に使える
・その銘柄から意識が解放される
・損失額が確定して計算できる
・税務上の損失として使える

失うもの

・戻ったときの利益
・「まだ負けていない」という感覚
→ 後者は失って構わないものです

一度に全部売る必要はありません。半分だけ売る、3分の1ずつ売る、という進め方でも構いません。動けない状態から抜けることのほうが重要です。

損切りの考え方は損切りとはで解説しています。

対処法② 損出しで税金を取り戻す

その年に他の銘柄で利益が出ているなら、含み損を実現させて相殺できます。

損出しの効果

今年の利益 +50万円 → 税金 約10万円
 ↓ 塩漬け株を売って −30万円を実現
損益通算後 +20万円 → 税金 約4万円
→ 約6万円の税負担が減る

実務上の注意
同じ銘柄を持ち続けたい場合、売った後に買い戻すことになります。
ただし同じ日に買い戻すと、取得価額が平均化されて損失が小さくなります。
→ 買い戻すなら翌営業日以降にするのが一般的です。ただしその間に株価が上がるリスクがあります。

※ 税制や口座の計算方法は改正・変更されます。実行前に税理士等の専門家と国税庁の最新情報、ご利用の証券会社の説明をご確認ください。

対処法③ 配当・優待で回収する

株価が戻らなくても、保有している間に受け取るもので損失を埋めるという考え方です。

確認すること 判断の目安
配当が継続しているか 減配・無配になっていないか
配当性向 100%を超えていれば無理をしている
自己資本比率・営業CF 財務が悪化していないか
優待の継続 廃止・改悪されていないか

この方法が成立するのは財務が健全で、配当を続けられる企業に限られます。株価が下がった理由が業績悪化なら、配当も止まる可能性が高くなります。

また、回収には長い時間がかかります。配当利回り3%なら、50%の下落を埋めるのに単純計算で十数年かかります。

対処法④ 保有し続ける

放置ではなく、意思を持って持ち続けるという選択です。成立する条件は限られます。

保有を続けてよい条件

買った理由がまだ有効である
・業績が悪化していない(下落は相場全体の要因)
・財務に問題がない
・その資金を当面使う予定がない
→ この4つがそろっているなら、下落は一時的な可能性があります

重要なのは「決めて持つ」ことと「決められずに持つ」ことはまったく違うという点です。前者は投資判断、後者はただの停止です。

やってはいけない対処

① 安易なナンピン買い

「平均取得単価を下げれば戻りやすくなる」と考えて買い増す方法です。しかし下がり続ける銘柄では、損失額が拡大するだけになります。

② 信用取引で取り返そうとする

損失を早く埋めようとレバレッジをかけると、失敗したときの傷が致命的になります。

③ 見なかったことにする

証券口座を開かなくなるのは危険なサインです。上場廃止の兆候や重要な開示を見逃します。

④ 「長期投資に切り替える」と言い換える

短期で買った銘柄を長期保有に変えるのは、多くの場合ただの先送りです。

①についてはナンピン買いとはで、許される条件を解説しています。ナンピンが有効なのは、下落の理由が需給要因で、企業の価値が変わっていない場合に限られます。

判断の手順

やること 判断のポイント
1 なぜ買ったのかを思い出す 思い出せないなら、それ自体が売る理由
2 その理由がまだ生きているか確認する 決算短信と直近の開示を読む
3 いま同じ価格で買うかを自問する 買わないなら、持ち続ける理由もない
4 今年の損益状況を確認する 利益が出ているなら損出しの選択肢がある
5 全部でなくてもいいので動く 半分売るという決断でも状況は変わる

信用取引の塩漬けは別問題

信用取引には期限があります
制度信用取引では6か月の返済期限があるため、
「待つ」という選択肢そのものが存在しません。
・期日が来れば強制的に決済される
・その間ずっと金利がかかる
・株価が下がれば追証が発生する
→ 現物の塩漬けとは危険度がまったく違います

信用の建玉を現物に切り替えたい場合は現引きという方法がありますが、買建代金の全額が必要で、含み損も消えません。

塩漬けを作らないために

予防策 中身
買う前に損切り価格を決める 買った後では決められなくなる
逆指値を置く 判断する自分を排除できる
買った理由を記録する 後から「理由が生きているか」を確認できる
1銘柄に集中させない 損失が大きいほど損切りできなくなる
定期的に全保有を見直す 半年に一度、すべての銘柄で③の自問をする

※ 本記事は投資用語の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

塩漬けに関するよくある質問

売らなければ損は確定しないのでは?
帳簿上はそのとおりですが、実質的には損をしています。その資金を他に使えない機会損失が積み上がるためです。100万円が50万円になって5年放置すると、含み損に加えて、その50万円を運用できていた分の利益も失っています。
塩漬け株はいつ処分すべきですか?
「いま同じ価格でこの株を買うか」を自問し、買わないと答えるなら処分すべきタイミングです。株価が買値に戻るかどうかではなく、その銘柄にいま資金を置く価値があるかで判断してください。
ナンピン買いで平均単価を下げるのは有効ですか?
条件次第です。下落の理由が相場全体の要因で企業の価値が変わっていないなら選択肢になりますが、業績悪化が原因の場合は損失を拡大させるだけになります。塩漬けを解消したいという動機で行うナンピンは、ほぼ失敗します。
損出しとは何ですか?
含み損のある株を売って損失を確定させ、その年の利益と相殺して税負担を減らす方法です。50万円の利益に対して30万円の損失を実現させれば、課税対象は20万円になります。同じ銘柄を持ち続けたい場合は買い戻すことになりますが、同日に買い戻すと取得価額が平均化されて効果が薄れます。
配当をもらいながら待つのはどうですか?
財務が健全で配当が継続している企業なら選択肢になります。ただし回収には長い時間がかかり、配当利回り3%では50%の下落を埋めるのに十数年かかる計算です。また業績悪化が下落の原因なら、配当そのものが減額される可能性があります。
全部売らないといけませんか?
いいえ。半分だけ、3分の1だけという売り方でも構いません。重要なのは全額を処分することではなく、動けない状態から抜け出すことです。一部でも売却すれば、資金と判断の自由が戻ります。
信用取引でも塩漬けはできますか?
できません。制度信用取引には6か月の返済期限があり、期日が来れば強制的に決済されます。その間も金利がかかり、株価が下がれば追証が発生します。現物の塩漬けとは危険度がまったく違うため、早期の判断が必要です。
塩漬けを作らないためにはどうすればいいですか?
買う前に損切り価格を決め、買った瞬間に逆指値を置くことです。買った後では心理が働いて決められなくなります。あわせて「なぜ買ったのか」を記録しておくと、後から判断の前提が生きているかを確認できます。

まとめ

塩漬けの本質は「損失」ではなく「動けなくなること」です。資金も時間も判断力も、その1銘柄に拘束されます。

この記事のまとめ

・含み損を抱えたまま売れなくなった状態
・市場はあなたの買値を知らない。買値を基準にしない
・放置している間に機会損失が積み上がっている
・判断基準は「いま同じ価格で買うか」
・対処法は損切り・損出し・配当回収・意思ある保有の4つ
・損出しで買い戻すなら翌営業日以降が基本
・信用取引には期日があるため待つ選択肢がない
・全部売る必要はない。動くことが目的

あわせて読みたい:損切りとはナンピン買いとは利確とはしこり玉とは信用期日とは

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