MBO(マネジメント・バイアウト)とは、その会社の経営陣が自社の株式を買い集め、非公開化して経営権を握ることです。
株主にとっては「保有株が市場価格より高い値段で買い取られ、その銘柄が上場廃止になる」という形で現れます。
そしていま、これは他人事ではありません。2025年の上場廃止は125件と過去最多を記録し、そのうちMBOは32社にのぼりました。
この記事でわかること
・2025年に上場廃止が過去最多になった実際の数字
・なぜMBOがここまで増えているのか
・保有株でMBOが起きたときの3つの選択肢
・応募しないと最後はどうなるか
・プレミアムの平均水準と、その意味
目次
MBOとは
MBO(読み方:えむびーおー)は「Management Buyout」の略で、日本語では経営陣による買収といいます。
↓ ファンドや金融機関から資金を調達
② TOB(公開買付け)を実施 … 市場価格にプレミアムを上乗せした価格で買付け
↓
③ 一定以上の株式を取得
↓
④ 残った少数株主を締め出し、上場廃止
株主が意識すべきは②と④です。②で売る判断をするか、④で強制的に買い取られるかのどちらかになります。
MBO・EBO・LBO・TOBの違い
似た用語が並ぶため混乱しやすいところです。それぞれ指しているものの階層が違います。
| 用語 | 意味 | 何を表す言葉か |
|---|---|---|
| MBO | 経営陣が自社を買収する | 誰が買うか |
| EBO | 従業員が自社を買収する | 誰が買うか |
| LBO | 買収先の資産や将来のCFを担保に借入れて買収する | どう資金を調達するか |
| TOB | 市場外で株式を買い集める手続き | どうやって買うか(手段) |
重要なのは、これらが排他的ではないという点です。実際のMBOは「経営陣(MBO)が、借入れを使って(LBO)、公開買付け(TOB)で買う」という形をとることがほとんどです。
2025年、上場廃止は過去最多の125件
MBOが注目されるのは、日本の株式市場でいま起きている構造変化そのものだからです。
| 項目 | 2025年 |
|---|---|
| 上場廃止銘柄数 | 125件(過去最多) |
| 上場廃止を前提としたTOB | 80社 |
| うちMBO | 32社 |
| 合計 | 112社 |
出典:東京商工リサーチ
上場廃止の理由の内訳を見ると、構図がさらにはっきりします。
| 理由 | 割合 |
|---|---|
| 他社による買収 | 44% |
| 支配株主等による買収 | 27% |
| MBO | 21% |
上場廃止の9割超が、経営不振ではなく「買われて消える」ケースです。これは以前の日本市場とはまったく違う光景です。
なぜMBOが増えているのか
背景には複数の要因が重なっています。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| ① 東証の資本コスト要請 | PBR1倍割れの改善など、上場を維持するコストが上がった |
| ② アクティビストへの対応 | 株主提案への対応に経営資源を割かれる |
| ③ 上場のメリットの低下 | 資金調達の必要がない企業にとって、開示負担だけが残る |
| ④ 買収資金の調達環境 | ファンドの資金が潤沢で、LBOの組成がしやすい |
| ⑤ 割安に放置された株価 | 経営陣から見て「自社株が安すぎる」状態 |
⑤は投資家にとって重要な視点です。MBOが成立するということは、経営陣が「プレミアムを払ってでも買う価値がある」と判断したということです。
つまりMBOの発表は、その株が市場で過小評価されていたことの証明でもあります。
プレミアムの平均は約47%
TOB価格は、直前の市場価格に一定の上乗せ(プレミアム)を加えて設定されます。
↓
TOBプレミアムの平均は約47%
… 株価1,000円の銘柄なら、約1,470円で買い取られる計算
だからMBOが発表されると、翌営業日の株価はTOB価格の近くまで一気に跳ね上がります。
下は2020年11月にMBOを発表した銘柄のチャートです。発表を境に急騰しているのがわかります。

※ 2020年当時のチャートです。画面に表示されている市場区分は当時のもので、2022年4月にプライム・スタンダード・グロースへ再編されています。
保有していた株主にとっては、短期間で大きな利益が確定する場面です。ただし、それは同時に「その銘柄の将来の上昇を諦める」ことでもあります。
保有株でMBOが実施されたときの3つの選択肢
| 選択肢 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① TOBに応募する | TOB価格で確実に売却できる | 手続きが必要。証券会社によっては口座開設から |
| ② 市場で売却する | 手続き不要。すぐ現金化できる | TOB価格をわずかに下回るのが通常 |
| ③ 保有を続ける | 何もしない | 最終的に強制的に買い取られる |
①と②の差は、手間と価格の差です。市場価格がTOB価格をわずかに下回るのは、TOBが不成立になるリスクと、手続きの手間が織り込まれるためです。
TOBに応募するには、買付代理人となっている証券会社に口座が必要な場合があります。期間には限りがあるので、応募すると決めたら早めに確認してください。
応募しないと最後はどうなるか
③を選んだ場合の話です。上場廃止後も株主として残り続けられるわけではありません。
つまり何もしなくても、最終的にはTOB価格と同等の水準で現金化されます。ただし、そのタイミングは自分では選べません。
| 放置した場合のデメリット | 内容 |
|---|---|
| 現金化までに時間がかかる | 手続きが完了するまで資金が動かせない |
| 課税のタイミングを選べない | 年をまたぐと損益通算の計画が崩れる |
| 価格が確定していない期間がある | 最終的な交付額は手続きの内容による |
とくに2行目は実害があります。年内に他の損失と相殺したい場合、放置すると株式譲渡の計上時期を自分でコントロールできなくなります。
2026年5月にTOBのルールが変わった
MBOを含むTOBの制度は、2026年5月1日施行の改正金融商品取引法で大きく変わりました。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2026年5月1日〜) |
|---|---|---|
| TOBが義務になる基準 | 3分の1超 | 30%超 |
| 市場内取引の扱い | 原則として対象外 | 市場内取引も対象に |
基準が引き下げられ、市場内での買い集めも規制対象になったということです。少数株主が知らないうちに支配権が移っている、という事態を防ぐための改正です。
詳しくはTOBとはで解説しています。
MBOのメリットとデメリット
| 立場 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 株主 | プレミアム(平均約47%)で売却できる | 上場廃止で将来の上昇を取れなくなる |
| 経営陣 | 短期業績に縛られず、長期の改革ができる | 多額の借入れを背負う |
| 会社 | 開示や株主対応の負担が消える | 市場からの資金調達ができなくなる |
株主のデメリット欄が本質です。MBOは短期的には利益をもたらしますが、長期で持ちたかった銘柄ほど、途中で強制的に降ろされることになります。
また、経営陣は買収する側なので、できるだけ安く買いたいという利益相反が構造的に存在します。TOB価格が妥当かどうかは、独立した第三者委員会の意見なども確認する価値があります。
MBOに関するよくある質問
まとめ
MBOは「経営陣が、割安に放置された自社株を、プレミアムを払って買い戻す」取引です。株主にとっては利益確定であると同時に、強制的な退場でもあります。
この記事のまとめ
・MBO・EBOは「誰が買うか」、LBOは「どう調達するか」、TOBは「どう買うか」
・2025年の上場廃止は125件で過去最多。うちMBOは32社
・上場廃止の理由は他社買収44%・支配株主27%・MBO 21%
・TOBプレミアムの平均は約47%(2025年6〜11月のMBO案件)
・選択肢はTOB応募・市場売却・保有継続の3つ
・応募しなくても最後はスクイーズアウトで現金化される
・放置すると課税のタイミングを選べなくなる
・2026年5月1日からTOB義務の基準が30%超に引き下げられた
※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづく解説であり、特定の銘柄や投資判断を推奨するものではありません。個別案件の条件は各社の適時開示をご確認ください。
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