ホルムズ海峡とは?日本の原油9割が通る要衝と株価への影響

ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾と外洋を結ぶ唯一の出口にあたる海上の要衝です。最も狭い部分の幅は約34kmしかありません。

ここには世界の海上原油貿易のおよそ20%が集中しており、日本が輸入する原油の大半もこの海峡を通ります。

そして2026年、この海峡は実際に封鎖されました。この記事では、そのとき何が起き、日本株のどこに影響が出たのかを整理します。

※ 本記事は2026年8月時点で確認できた情報にもとづいています。情勢は流動的なため、最新の状況は報道等でご確認ください。

この記事でわかること

・ホルムズ海峡が世界最重要とされる理由
・日本の依存度がどれくらいか
・2026年に実際に起きたこと
・ナフサショックという日本特有の打撃
・打撃を受ける業種と恩恵を受ける業種

ホルムズ海峡とは

ホルムズ海峡(読み方:ほるむずかいきょう)は、イランとオマーンの間にある海峡です。ペルシャ湾から外洋へ出るには、ここを通るしかありません。

位置関係
ペルシャ湾(サウジ・UAE・イラク・カタール・クウェートなどの積出港)
 ↓ ホルムズ海峡(最狭部 約34km) ← ここしか出口がない
オマーン湾 → インド洋 → 世界へ

海峡には往路と復路で分かれた一方通行の航路が設けられており、そこを日量およそ2,000万バレルの原油が通過しています。

なぜ「世界最重要の要衝」なのか

理由は単純で、代わりの経路がほとんどないからです。

項目 数値
通過する原油 日量 約2,000万バレル
世界の海上原油貿易に占める割合 およそ20%
アジア向けの割合(2024年) 通過量の推定84%
中国の依存度 石油輸入の約3分の1
欧州のLNG 輸入量の12〜14%をカタールから調達

このように一点に集中している場所をチョークポイント(要衝)と呼びます。ここが止まると、代替ルートで吸収しきれません。

日本は原油の9割をここに依存している

日本にとって、この海峡は他人事ではありません。

日本の原油輸入
日量 約270万バレル
中東依存度 9割超
意味すること
中東からの原油は
ほぼすべてこの海峡を通る
→ 止まれば直撃する

実際、2026年のイラン攻撃から3か月で日本の原油輸入は5割減少しました。主要国のなかで突出した減少幅です。

なぜ日本だけ突出するのか
産油国から遠く、パイプラインで陸送する選択肢がないためです。米国のようにシェールオイルを自国生産することも、欧州のようにロシアやノルウェーから調達することもできません。島国であることが、そのままエネルギー安全保障の弱点になっています。

2026年に何が起きたのか

ここからが本題です。2026年、この海峡は実際に封鎖されました。

時期 できごと
2月28日 米国とイスラエルがイランを共同空爆。イランが海峡を封鎖
3月2日 カタールがLNG生産を停止。欧州のガス価格が最大45%上昇
3月8日 ブレント原油が4年ぶりに1バレル100ドルを突破
3月12日 商船への攻撃21件を確認。タンカー交通はほぼゼロに。150隻超が海峡外で投錨
3月19日 米軍が封鎖を打開する軍事作戦を開始
4月13日 米海軍が今度はイラン側の船舶を封鎖(逆封鎖
6月17日 米・イラン間で覚書が署名され、航行が再開
6月25日〜7月 船舶への攻撃が再発。米国が攻撃を再開し、航行は再び不透明に

重要なのは「一度解決したように見えて、また元に戻った」という点です。相場にとって最も扱いにくい状態が続いています。

原油価格と保険料の急騰

価格の動きは記録的でした。

項目 封鎖前 封鎖後
ブレント原油 100ドル未満 ピーク 1バレル126ドル
戦争リスク保険料率 船体保険価額の0.125% 0.2〜0.4%へ、その後さらに前週比4〜6倍
欧州のガス価格 最大45%上昇

見落とされやすいのが保険料です。超大型タンカーの場合、料率の上昇だけで1航海あたり数十万ドル規模の追加負担になります。

原油そのものの値段だけでなく、運ぶコストも同時に跳ね上がるのがチョークポイント危機の特徴です。

ナフサショックという日本特有の打撃

日本で最も広く影響が出たのは、原油そのものよりもナフサでした。

ナフサとは
原油から精製される石油製品のひとつ
プラスチック・化学繊維・塗料・接着剤などの基礎原料
→ 食品包装、医療材料、自動車部品、日用品に広く使われる
項目 内容
価格の動き トン600〜700ドル台 → 約2週間で約1,100ドル
影響を受ける企業数 全国 約47,000社が化学品メーカーに依存
製造業に占める割合 およそ3割が調達リスクに直面

これがナフサショックと呼ばれた現象です。原油高が「ガソリンが高い」だけの話で終わらず、製造業の3割に波及したという点が重要です。

物価への波及については消費者物価指数で解説しています。

石油備蓄という防波堤

日本にはこうした事態に備えた仕組みがあります。

項目 内容
備蓄量(国家+民間) 約8か月分(2026年3月時点)
2026年3月の対応 国家備蓄から約1か月分(約850万キロリットル)の放出を決定

備蓄があるおかげで、封鎖が始まってすぐにガソリンスタンドが枯れるという事態にはなりませんでした。

ただし備蓄は「時間を買う」手段にすぎない
備蓄は減れば終わりです。価格の上昇そのものを止める力はありません。供給が細った状態が長引けば、いずれ実体経済に出てきます。株式市場が備蓄放出のニュースで安心しきらないのはこのためです。

打撃を受ける業種

原油高は、日本株のなかではっきりと明暗を分けます。

業種 理由
化学 ナフサが主原料。調達難と価格転嫁の遅れが直撃する
空運 燃料費がコストの大きな割合を占める
陸運・物流 軽油価格の上昇が輸送コストを押し上げる
電力・ガス 燃料調達費が増える。料金への反映には時間差がある
紙・パルプ、窯業 製造工程で大量のエネルギーを使う
食品・小売 包装資材と輸送費の上昇。値上げしにくい商品ほど厳しい

共通するのは「エネルギーを買う側」であり、かつ「値上げしにくい」業種です。

コストが上がっても製品価格に転嫁できれば利益は守れます。転嫁できるかどうかが、同じ業種内でも明暗を分けます。

恩恵を受ける業種

業種 理由
石油・鉱業 原油価格の上昇が収益に直結する
海運 迂回による航行距離の延長で運賃が上昇することがある
商社 資源権益を持つ企業は価格上昇の恩恵を受ける
再生可能エネルギー関連 エネルギー安全保障の観点から注目が集まりやすい
防衛関連 地政学リスクの高まりで思惑が向かいやすい
「恩恵」は業績と思惑を分けて考える
石油や商社のように実際に利益が増えるものと、防衛関連のように思惑で買われるものは性質が違います。後者は緊張が緩めば急速に戻されます。シクリカル銘柄と同じく、業績の裏づけを確認してください。

円安との二重苦

日本の投資家にとって、原油高そのものより深刻なのがこの組み合わせです。

原油はドル建てで取引される
 ↓
原油価格が上がる × 円安が進む
 ↓
円で払う輸入代金は掛け算で増える

原油が2割上がっただけでも、同時に円が1割安くなれば、円建ての負担は単純な足し算ではなく掛け算で膨らみます。

2026年は円安が進んだ局面と重なりました。「原油高は日本にとって二重苦」といわれるのはこの構造があるためです。

ただし注意点があります。地政学リスクが高まると円が買われるという動きも過去にはありました。有事の際に円がどちらに動くかは、その時々の金利差や資金の流れによって変わります。リスクオフで必ず円高になるとは限りません。

個人投資家が見るべき指標

ニュースの見出しではなく、数字で状況を追うための指標を挙げます。

見るもの わかること
原油価格(WTI・ブレント) 危機の織り込み度合い。100ドルが心理的な節目
タンカーの通航量 実態としての封鎖の度合い。価格より先に動くことがある
戦争リスク保険料率 保険会社が見ているリスクの水準
VIX(恐怖指数) 市場全体の警戒度
ドル円 円建てコストへの跳ね返り
ナフサ価格 製造業への波及の度合い

特に通航量は重要です。「合意が成立した」という報道が出ても、実際に船が通っていなければ状況は改善していません。2026年6月の覚書のあとに攻撃が再発したのが、まさにこの例です。

今後の3つのシナリオ

予測はできませんが、起こりうる展開を先に整理しておくと、値動きに慌てずに済みます。

シナリオ 相場への影響
正常化に向かう 原油が下落。化学・空運・陸運が戻し、資源関連は売られる
不安定なまま長期化 高値圏で乱高下。備蓄が減るほど影響が実体経済に出る
再び全面封鎖 原油が再急騰。市場全体がリスクオフに傾く

いずれの場合も、個人投資家にできる備えは限られています。

① 特定の業種に偏っていないか確認する ポートフォリオの点検
② 損切りの基準を決めておく 急落時に判断すると遅れる
③ 窓を開けて始まる前提で株数を決める 海外時間に動く材料
④ 思惑買いと業績を区別する 関連銘柄として急騰したものは戻りも速い
⑤ 積立は続ける 時間分散の効果はこうした局面でこそ出る

③は実務的に重要です。地政学リスクは日本市場の取引時間外に動くことが多く、翌朝いきなりギャップダウンで始まります。その場合、損切り注文は想定した価格では機能しません。

※ 本記事は情勢と市場の関係を解説するものであり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

ホルムズ海峡に関するよくある質問

ホルムズ海峡が封鎖されると日本はどうなりますか?
原油輸入の9割超が中東経由のため、供給が大きく細ります。実際に2026年のイラン攻撃から3か月で日本の原油輸入は5割減少しました。国家備蓄と民間備蓄で当面はしのげますが、価格の上昇そのものを防ぐことはできません。
迂回するルートはないのですか?
サウジアラビアやUAEには海峡を通らないパイプラインもありますが、輸送能力はホルムズ海峡の通過量に比べて限られています。日量約2,000万バレルという規模を代替できる経路は存在しません。
ナフサショックとは何ですか?
原油から精製されるナフサの価格高騰と供給不足が、製造業全体に波及した現象です。ナフサはプラスチックや化学繊維の基礎原料であり、2026年には全国約47,000社、製造業の約3割が調達リスクに直面したとされます。
石油備蓄は何か月分ありますか?
2026年3月時点で国家備蓄と民間備蓄を合わせて約8か月分とされています。同月には国家備蓄から約1か月分にあたる約850万キロリットルの放出が決定されました。ただし備蓄は時間を稼ぐ手段であり、価格上昇を止める効果は限定的です。
原油高になると必ず日本株は下がりますか?
一律には下がりません。石油・鉱業や資源権益を持つ商社などは収益が改善する一方、化学・空運・陸運などはコスト増になります。指数全体としてどう動くかは、上昇の速さや円相場との組み合わせによって変わります。
なぜ円安が重なると影響が大きくなるのですか?
原油がドル建てで取引されるためです。原油価格の上昇と円安が同時に起きると、円で支払う輸入代金は足し算ではなく掛け算で増えます。企業のコスト増と家計の負担増が同時に進むことになります。
関連銘柄を買えば利益が出ますか?
保証はありません。地政学リスクを材料とした上昇は思惑によるものが多く、緊張が緩和すると急速に戻されます。実際に業績が改善する企業と、思惑で買われているだけの企業を区別して判断してください。
個人投資家は何をすればいいですか?
特定の業種に偏っていないかポートフォリオを確認し、損切りの基準を事前に決めておくことが基本です。地政学リスクは日本の取引時間外に動くことが多く、翌朝は窓を開けて始まります。想定外の水準で約定する前提で株数を調整してください。

まとめ

ホルムズ海峡は「日本のエネルギーが通る、幅34kmの一本道」です。ここが詰まると、ガソリン価格だけでなく製造業の3割にまで影響が及びます。

この記事のまとめ

・ペルシャ湾唯一の出口で、最狭部は約34km
・日量約2,000万バレル=世界の海上原油貿易の約20%が通る
・日本の原油輸入は中東依存度9割超
・2026年2月に封鎖され、ブレント原油はピーク126ドル
・ナフサ高騰で製造業の約3割が調達リスクに直面
・石油備蓄は約8か月分だが価格上昇は止められない
・化学・空運・陸運は打撃、石油・海運・商社は恩恵
・円安が重なると円建ての負担は掛け算で増える

※ 本記事は2026年8月時点の情報にもとづいています。情勢は流動的であり、最新の状況は報道等でご確認ください。

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