損切りとは、含み損を抱えた株を売却して、損失の拡大を止めることです。ロスカット、ストップロスともいいます。
投資で生き残るためにもっとも重要な行為ですが、実行できる人は多くありません。
この記事では、なぜ必要なのかを数字で示したうえで、実行できるルールの作り方を解説します。
この記事でわかること
・損切りルールを決める4つの方法
・損切り幅ではなく株数で調整する考え方
・損切りしてはいけないケース
・タイミングを逃してしまったときの対処
損切りとは
損切り(読み方:そんぎり)とは、損失が出ている状態で売却し、その損失を確定させることです。
資金が残っていれば、次の機会で取り返せます。
→ 資金を失えば、市場から退場することになります
損切りは負けを認める行為ではなく、次に参加するための費用だと考えると実行しやすくなります。
なぜ損切りが必要なのか
ここがこの記事の核心です。下落と回復は対称ではありません。
| 下落率 | 元に戻すのに必要な上昇率 | 100万円が |
|---|---|---|
| −10% | +11.1% | 90万円 |
| −20% | +25% | 80万円 |
| −30% | +42.9% | 70万円 |
| −50% | +100% | 50万円 |
| −70% | +233% | 30万円 |
| −90% | +900% | 10万円 |
半分になった資金を戻すには、2倍にしなければなりません。これが損切りを先送りしてはいけない理由のすべてです。
10%の下落なら11%の上昇で戻ります。しかし放置して50%まで拡大させると、必要な上昇率は10倍近くに跳ね上がります。
損切りができない理由
| 理由 | 起きていること |
|---|---|
| 損を確定させたくない | 売らなければ「まだ負けていない」と思える |
| 戻る可能性を捨てられない | 「明日上がるかもしれない」が毎日続く |
| 判断ミスを認めたくない | 売却=間違いを認める行為に感じられる |
| ルールを決めていない | 基準がないため、そのつど判断することになる |
4行目が唯一、技術で解決できる問題です。心理は変えられませんが、ルールと仕組みは作れます。
ルールを決める4つの方法
| 基準 | 決め方 | 特徴 |
|---|---|---|
| ① 率で決める | 買値から○%下がったら売る | 単純で守りやすい |
| ② 金額で決める | 損失が○円に達したら売る | 資金管理と結び付けやすい |
| ③ 節目で決める | 直近安値や移動平均線を割ったら売る | 相場の構造に沿っている |
| ④ 理由で決める | 買った理由が崩れたら売る | もっとも本質的。株価と無関係に判断できる |
③は実務的に優れています。「直近安値を割ったら、上昇の前提が崩れた」という判断は、多くの参加者が共有している基準だからです。
何%で切るべきか
「損切りは8%」といった数字がよく語られますが、銘柄によって適切な幅は変わります。
1日の値幅が1%程度の大型株 → 5%の下落は明確な異常
1日の値幅が7%ある新興株 → 5%はただの日常的な揺れ
→ 後者に5%の損切りを置くと、意味のない振れで振り落とされます
目安として、その銘柄の日常的な値幅より外側に置いてください。ボラティリティを確認すると判断しやすくなります。
株数で損失額を調整する
ここが多くの人が見落とすポイントです。損切り幅を狭くする代わりに、株数を減らすという方法があります。
ケースA 損切り幅50円(5%)→ 2万円 ÷ 50円 = 400株まで
ケースB 損切り幅100円(10%)→ 2万円 ÷ 100円 = 200株まで
→ 幅を広く取りたいなら、株数を減らせばいい
この考え方を使えば、「損切り幅が狭すぎて振り落とされる」という問題を、損失額を増やさずに解決できます。
先に決めるのは「いくらまで失っていいか」です。そこから損切り価格と株数が導かれます。
逆指値で自動化する
ルールを決めても、実行できなければ意味がありません。判断する自分を仕組みで排除します。
・窓を開けて下に飛べば、設定価格を飛び越えて約定する
・ストップ安で値が付かなければ売れない
・有効期限が切れると注文そのものが消える
→ 「置いてあるから安心」と放置しないでください
損切り貧乏を避ける
損切りを繰り返して資金が減っていく状態を損切り貧乏といいます。
| 原因 | 対処 |
|---|---|
| 損切り幅が狭すぎる | 幅を広げ、代わりに株数を減らす |
| 利確が早すぎる | 利益は損失の2倍以上を目標にする |
| 売買回数が多すぎる | 条件を満たすときだけ入る。待つことも戦略 |
| エントリーが雑 | 損切りが多いのは、そもそも買い方に問題がある |
最後の行が本質です。損切りが機能していないのではなく、入るところが間違っているという可能性を疑ってください。
損切りしたあとにやること
③がとくに重要です。ルールどおりに損切りできたなら、それは失敗ではありません。
結果ではなく、プロセスで評価してください。正しい手順で損切りした取引は、成功した取引です。
損切りと税金
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| 損益通算 | 同じ年の売却益や配当と相殺できる |
| 繰越控除 | 相殺しきれない損失を翌年以降3年間繰り越せる(確定申告が必要) |
| NISA口座 | 損失は無いものとされ、損益通算も繰越控除もできない |
※ 税制は改正されます。実際の申告にあたっては税理士等の専門家と国税庁の最新情報をご確認ください。
3行目は見落とされやすい点です。NISAで損切りしても、税務上のメリットは一切ありません。
損切りしてはいけないケース
・積み立て投資の途中の下落
・市場全体の下落で、企業に問題がない
・買った理由がまだ生きている
・最初から長期で持つと決めていた
・買った理由が崩れた
・決めたルールに触れた
・業績が構造的に悪化した
・信用取引で追証が近い
積み立て投資にはそもそも損切りという概念がありません。下落局面で安く買うことを前提にした手法だからです。
短期売買と長期投資を混同しないでください。同じ「株を持っている」でも、判断の基準はまったく違います。
タイミングを逃したとき
すでにルールの水準を大きく下回ってしまった場合はどうするか。
買わないなら、持ち続ける理由もありません
半分売るだけでも、判断の自由が戻ります
「3か月で戻らなければ売る」と新たに決め直す
放置した状態が続くと塩漬けになります。動けない状態から抜けることが、まず先です。
※ 本記事は投資用語の解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
損切りに関するよくある質問
まとめ
損切りは「次の取引ができる状態を守るための費用」です。感情ではなく、買う前に決めたルールで実行してください。
この記事のまとめ
・損失が大きくなるほど回復は指数的に難しくなる
・ルールを決めていないことだけが、技術で解決できる問題
・もっとも本質的な基準は「買った理由が崩れたか」
・損切り幅は銘柄の値動きの大きさに合わせる
・幅を広げたいなら株数を減らして損失額を調整する
・買った瞬間に逆指値を置くのがもっとも確実
・積み立て投資には損切りという概念がない

