クロス取引とは

クロス取引(読み方:くろすとりひき)

クロス取引とは、とある銘柄に対して同じ数量の買い注文と売り注文を同時に発注する取引の事をいいます。

買いと売りを同量、同価格にて約定させるので、基本的に株価の変動において利益を得る事も損をする事もありません。
ただし、注文時に手数料は発生します。

クロス取引は主に以下の目的で行われます。

・株主優待のため(優待タダ取り)
・節税のため(損出し)
・信用取引の返済期日に伴う乗り換え

後ほどの項目でひとつずつ詳しく説明していきます。

クロス取引メモ

・クロス取引とは同じ数量の買い注文と売り注文を同時に発注する取引の事
・買いと売りを同量、同価格にて約定させるので株価の変動において損益の変動はしない
・主に『株主優待』『節税』『乗り換え』の目的で行われる

株主優待目的のクロス取引(優待タダ取り)

クロス取引をする目的として一番多いのが、この株主優待をお得に取るためのクロス取引です。
いわゆる『優待タダ取り』などと呼ばれるもので、個人投資家に人気がある手法となります。

様々な所で優待タダ取りとは書かれていますが、正確には取引の売買手数料のみで株主優待をもらう方法となります。
そのため、厳密に言うとタダではなくコストは発生するのでご注意ください。

株主優待をもらうには権利付最終日に優待が欲しい企業の株を持っている必要があります。

ですが、優待の人気がある企業の株価は、権利付最終日の翌日(権利落ち日)に株価が下落してしまうことが多いです。

権利落ち株価

上記画像は積水ハウスの権利確定日付近の株価推移です。
見ての通り、株主優待と配当が貰える権利確定日の翌日に大きく株価が下落しています。

こういった場合、優待をもらおうと株式を保有していると翌日の株価値下がりにより損失を受けてしまうことになります。
この値下がりによる損失を回避するために、クロス取引にて株主優待を取得するのが優待目的のクロス取引となります。

優待取得のためのクロス取引のやり方

前述した通り、クロス取引とは同じ数量の買い注文と売り注文を同時に発注する取引方法です。

優待を取るためには『権利付最終日』に『現物』で株を保有している必要があります。

優待を取るのに必要な株数が100株の場合、権利付最終日の取引開始前(8時59分まで)に『100株の現物買い注文』と『100株の信用売り注文』を同時に『成り行き』で注文します。
すると、現物買いと信用売りの両方がその日の始値の価格で約定します。

取引が成立したら、権利付最終日が終了するまで保有を継続します。
途中で株を手放すと優待をもらえる権利がなくなってしまうので注意しましょう。

優待の権利が確定したら、翌営業日の権利落ち日以降に現渡をしてポジションを解消、クロス取引を終了します。

以上が優待取得のためのクロス取引のやり方です。
この方法で株主優待を売買手数料のみで受け取る事ができます。

現渡(げんわたし)とは?
信用取引の決済方法のひとつです。
売り建てた株式を決済する時に買い戻しをするのではなく、現物で保有している同数の同銘柄を差し入れて決済することを「現渡し」といいます。
この取引は売買手数料が発生しないため、優待のためにクロス取引をする場合は現渡しで決済しましょう。

クロス取引メモ

・株主優待をもらうには権利付最終日に株を持っている必要がある
・権利付最終日の取引開始前に同数の買い注文と売り注文を成り行きで注文する
・権利落ち日以降にクロス取引を終了する時は現渡しでポジションを解消する

クロス取引時の配当について

結論から書くと、クロス取引をした際の配当金は貰えません。

配当金は株主優待と同様に現物で株を保有していれば貰えますが、配当を出す銘柄を信用売りをする際に配当金と同額の金額を支払わなくてはいけないからです。
このコストの事を『配当調整金』といいます。

そのため、買った現物株で貰える配当金は信用売りで発生する配当調整金で相殺されるため、配当金は貰えません。
更に正確に言うと、配当金には約20%の税金が引かれるため、その差額を支払う必要があります。

クロス取引メモ

・クロス取引では配当金は貰えない
・配当調整金が発生するため、配当金を相殺する
・配当金には約20%の税金が引かれるため、その差額は支払う必要がある

節税のためのクロス取引(損出し)

節税のためのクロス取引とは、いわゆる『損出し』と呼ばれる年末に行う事が多い取引手法です。

損出しとは簡単に言うと、年末までに損失を確定させることです。

含み損銘柄の損失を確定させて、その年に既に確定している利益にかかる税金を相殺します。
場合によっては払いすぎている税金(源泉徴収分)が返却されます。
重要な点は、損切りとは違い節税することが目的なので損失を確定させる為に売却した後に同一銘柄を買い戻す点です。

損出しをする時の注意点

損出しのためにクロス取引をする際、以下の二点には注意が必要です。

・含み損を現物で保有している場合
・権利付最終日までに取引完了させる

以下、それぞれ説明します。

含み損を現物で保有している場合

含み損の銘柄が現物株の場合、損出しを同一営業日に行ってはいけません。
現物の場合、同一銘柄を複数回売買した時は「買い」が先にあったとして取得単価が平均化されてしまいます。
例えばですが、現状2000円の株を100株持っているとします。
同じ日にこの株を1000円で100株売って、同じく1000円で100株買いとクロス取引した場合、取得単価が平均化されて1500円の株を100株持っている状態になってしまいます。
そのため、現物株で含み損がある場合は現物で100株売りと信用取引で100株買いのクロス取引をして翌日に信用取引で買った100株を現引きすると良いでしょう。

権利付最終日までに取引完了させる

損出しをする場合は年末とお話しましたが、株の受け渡し日を考慮して権利付最終日までに取引を完了する必要があります。
権利付最終日は、権利確定日の2営業日前となります。
例として、2020年の場合は大納会が12月30日なので、12月28日が損出しの最終日となります。

クロス取引メモ

・損出しとは年末までに損失を確定させること
・含み損株の損失確定をし、利益にかかる税金を相殺して節税する
・節税目的なので、損失確定した後は同一銘柄を買い戻す

信用取引の返済期日に伴う乗り換えのためのクロス取引

信用取引の建て玉には返済期日があります。
いわゆる信用期日(しんようきじつ)といわれるものです。
制度信用では返済期日が6カ月と定められており、「買い」「売り」共に新規建てした約定日から6カ月後にその建て玉を決済しなくてはなりません。
信用期日までに決済をしない場合は強制的に自動決済されてしまいます。

そのため、信用期日を迎える前に現在信用取引で保有している銘柄を決済して、同銘柄を同価格にて新たに建てることで信用期日をリセットすることができます。
このような取引を『乗り換えのためのクロス取引』といいます。

クロス取引メモ

・信用取引の建て玉には返済期日がある(信用期日)
・信用期日までに決済をしないと強制的に自動決済されてしまう
・クロス取引を行い信用期日をリセットする(乗り換えのためのクロス取引)

クロス取引をする際の注意点

クロス取引をする際には以下の二点に注意しましょう。

・制度信用取引でクロス取引をする場合
・相場操縦とならないように注意する

それぞれ説明していきます。

制度信用取引でクロス取引をする場合の注意点

クロス取引には信用取引の空売りを利用しますが、信用取引には以下の2種類が存在します。

・一般信用取引
・制度信用取引

それぞれに特徴がありますが、特に大きな違いとして『逆日歩(ぎゃくひぶ)』が発生するかしないかという点があります。
一般信用取引では逆日歩が発生しませんが、制度信用取引では発生します。
逆日歩は簡単にいうと信用取引の売り方が支払う事になるコストのことです。

逆日歩の怖い所は発生したコストがいくらになるか前もってわからない所にあります。
そのため、優待をクロス取引で取る場合は基本的に一般信用取引を利用します。

ただし、一般信用取引が用意されていない銘柄や一般信用取引が取れなかった場合に制度信用取引を用いてクロス取引をする場合もあります。
その際は上記した逆日歩の価格によっては損をしてしまう場合もあるのでご注意ください。
人気がある優待の時などは信用空売りをする人が多くなり、結果として逆日歩もかなり高額となる場合もあります。

数千円分の優待を取るためにクロス取引をして、逆日歩で1万円以上のコストが発生したというパターンもよくあることです。
株主優待を取るためのクロス取引(優待タダ取り)をする場合はできるだけ一般信用取引を利用してクロス取引を行いましょう。

相場操縦とならないように注意する

クロス取引をする場合は相場操縦とならないように注意しましょう。
相場操縦とは、株式市場において相場を意識的に変動させて自己の利益を図ろうとする行為のことをいいます。

相場操縦に該当する行為はいくつかありますが、その中の『仮装売買』という行為にクロス取引が該当する可能性があり注意が必要です。
仮装売買とは特定の株式に対して第三者に誤解を生じさせる目的をもって、同一人物が同時期同価格で買いと売りの注文を行う取引です。

クロス取引は『第三者に誤解を生じさせる目的』はないものの、結果として価格形成に影響を与える可能性が高いです。
そのため、クロス取引をする場合は、ザラ場中を避けて寄付前に発注するなど価格形成への影響を考慮して取引しましょう。

クロス取引メモ

・制度信用取引で空売りをする場合『逆日歩』が発生する場合がある
・優待タダ取りは基本的に『一般信用取引』を利用してクロス取引するべき
・相場操縦とならないように注意する
・クロス取引をする際は寄付前に発注するなど価格形成への影響を考慮する

クロス取引に向いているおすすめ証券会社

クロス取引について説明しました。

最後に、いざクロス取引を始めようとなった時におすすめの証券会社を紹介します。

クロス取引に向いているかどうかの判断は以下のような条件に該当する証券会社です。

・一般信用取引の「売り」ができる
・手数料が安い
・株の在庫数が多い

クロス取引はなるべく一般信用で行うと説明した通り『一般信用取引の「売り」ができる』という条件は必須でしょう。

またクロス取引は手数料は発生しますので、少しでも安い証券会社が良いでしょう。

そして株の在庫数ですが、実は一般信用の売りは証券会社毎に取引できる株の数が決まっています
この取引できる数を在庫数といいます。

一般信用取引の株は証券会社毎に在庫数が違うので、様々な銘柄の在庫数が多い証券会社を優先して口座を開設していきましょう。

以上の点を踏まえて、クロス取引におすすめの証券会社は以下の証券口座です。

証券会社 詳細
SBI証券 取り扱い銘柄数:◎
コスト面:〇
在庫数:◎
松井証券 取り扱い銘柄数:〇
コスト面:△
在庫数:〇
楽天証券 取り扱い銘柄数:〇
コスト面:◎
在庫数:〇

証券会社の口座開設は他にも様々な点を考慮して作成すると良いかと思われます。
当サイトでは『初心者の方におすすめの証券会社7選!』もご紹介していますので、参考にしてください。

クロス取引に関してよくある質問

クロス取引の発表や情報はどこで確認できますか?
クロス取引自体は個人レベルの手法なので公表されませんが、優待クロス向け銘柄は株探の「株主優待カレンダー」やYahoo!ファイナンスの優待銘柄一覧で確認可能。逆日歩リスクを避けるため、一般信用在庫状況を証券会社のツールでチェックしましょう。
クロス取引でNISA口座を使えますか?
NISA口座では信用取引不可のため、現物株のみでクロス取引はできません。優待タダ取り目的ならNISAで現物保有し、非課税メリットを活かす戦略を検討。制度信用の逆日歩リスクを避け、一般信用と組み合わせましょう。
クロス取引の税金はどうなりますか?
損出しクロスの含み損実現で譲渡損失が発生し、利益相殺で節税可能(源泉徴収税20.315%対象)。NISA口座の非課税メリットを活用し、株価変動リスクを考慮した損益通算を。優待クロスは優待価値が課税対象外です。
クロス取引で逆日歩を避ける一般信用の在庫確保コツは?
権利確定日1ヶ月前から証券会社の在庫を確認し、早めに信用売り注文。人気銘柄の株主優待タダ取りでは在庫枯渇しやすいので、複数証券会社(SBI・楽天)で分散。制度信用の逆日歩リスクを最小限に抑えましょう。
クロス取引後の株価変動リスクはどう回避できますか?
権利落ち日の株価下落を信用売りでヘッジし、現渡し決済でリスクゼロ。損出しクロスでは再購入タイミングを株価影響分析で調整。希薄化リスクの低い銘柄を選び、分散投資で株主優待タダ取りを安定させましょう。
クロス取引が失敗(在庫不足・注文ミス)になるケースはどんな時ですか?
一般信用在庫切れや寄付前注文忘れで失敗しやすい。制度信用の逆日歩高騰も想定外コストに。株主優待タダ取りの人気銘柄で発生しやすいので、事前シミュレーションと複数口座活用でリスク回避しましょう。
クロス取引で株主優待の権利を複数回獲得できますか?
複数口座でクロス取引を繰り返せば可能ですが、手数料増大と逆日歩リスクに注意。NISA口座の非課税メリットを活かし、株価変動リスクを考慮した長期戦略で優待タダ取りを最適化しましょう。
クロス取引のコスト(手数料・金利)を証券会社で比較するポイントは?
一般信用の手数料無料キャンペーンや金利低めの証券会社を選び、制度信用の逆日歩履歴を確認。株主優待タダ取りの総コストを計算し、NISA口座併用で節税効果を最大化しましょう。
クロス取引と現物取引の株価影響の違いは何ですか?
クロス取引は信用売りで株価下落をヘッジしリスクゼロだが、手数料発生。一方現物取引は株価変動リスク全負担で優待タダ取り不可。逆日歩リスクの高い銘柄ではクロス取引が優位です。
クロス取引後の決済で現渡しを忘れたらどうなりますか?
決済忘れで信用建玉が継続し、金利・逆日歩が発生。株価変動リスクが増大するので、権利落ち日直後に現渡し注文を。NISA口座の現物保有と組み合わせ、株主優待タダ取りのミスを防ぎましょう。
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