金利が上がると株価はどうなる?銀行株はもう2.4倍

「金利が上がると株価は下がる」は、データで見ると半分しか当たっていません。米国の長期金利が急上昇した22回のうち、S&P500が上がったのは10回(45.5%)でした。

ほぼ五分五分です。そして日本では、もっとはっきりした結果が出ています。

日銀が2024年3月にマイナス金利を解除してから2026年8月までの株価を比べました。

銘柄 2024年3月18日 2026年8月28日 騰落率
日経平均 39,740 66,132 +66.4%
みずほFG(8411) 2,966円 8,486円 +186.1%
三菱UFJ(8306) 1,533.5円 3,658円 +138.5%
三井住友FG(8316) 2,895.7円 6,902円 +138.4%

銀行株はすでに2.4倍から2.9倍になっています。

「金利が上がるから銀行株は買い時」という話には、この2年半で何が起きたかという前提が抜けていることが多くあります。この記事では、金利と株価の関係を経路ごとに分解したうえで、実際の数字で確認していきます。

この記事でわかること

・金利が株価に伝わる3つの経路
米金利が急上昇した22回のS&P500(独自集計)
日銀の利上げ5回と日経平均の反応(独自集計)
銀行株がすでにどれだけ上がったか(独自集計)
・なぜ銀行は金利上昇で利益が増えるのか
銀行株が上がらなくなる条件
・金利上昇に強い業種・弱い業種
・いまの政策金利の水準と、次に見る指標

※ この記事は仕組みとデータの解説であり、特定の銘柄や売買を推奨するものではありません。

金利が株価に伝わる3つの経路

金利と株価の関係が単純でないのは、伝わり方が1つではないためです。

経路 仕組み 株価への向き
① 割引率 将来の利益を現在価値に直すときの割引率が上がる マイナス(とくに成長株)
② 資金調達コスト 借入の利息が増え、企業の利益が減る マイナス(借入の多い企業)
③ 景気の強さ 景気が良いから金利が上がっているという因果 プラス

③が①②を打ち消すことがあるため、金利上昇が必ず株安になるとは限りません。

重要なのは「なぜ金利が上がっているのか」です。

景気が強いから上がる金利
企業の売上と利益も伸びている
株価は上がりやすい

例:景気拡大局面での利上げ

物価を抑えるための金利
景気を冷やすことが目的
株価は下がりやすい

例:インフレ抑制のための急な利上げ

【独自集計】米金利が急上昇した22回、株価はどうなったか

米国の10年債利回りが60営業日で1.0ポイント以上上昇した局面を抽出し、その間のS&P500を調べました。

期間 10年債利回り S&P500
1994年1月→4月 5.86→7.15% −6.1%
1996年1月→4月 5.66→6.67% +3.7%
2003年5月→8月 3.45→4.56% +6.9%
2009年3月→6月 2.53→3.79% +19.1%
2010年10月→2011年1月 2.38→3.48% +9.6%
2016年9月→12月 1.56→2.56% +5.5%
2022年1月→4月 1.71→2.78% −5.3%
2022年7月→10月 2.91→4.01% −10.4%
2023年7月→10月 3.76→4.78% −4.5%

出典:米10年債利回りとS&P500の日足終値(Yahoo!ファイナンス)をもとに独自集計。直近の主な局面を抜粋。

全22回の集計結果

・S&P500が上昇したのは10回(45.5%)
・平均は−0.6%

🔵 「金利が上がると株価は下がる」は、当たるのがほぼ半分。

2009年(+19.1%)のように、景気回復とともに金利が上がった局面では株価も大きく上がっています。一方2022年(−10.4%)のように、インフレ抑制のための急な利上げでは下げています。

金利の方向だけを見ても、株価の方向は決まりません。上がっている理由が景気なのか物価なのかで、答えが変わります。

【独自集計】日銀の利上げ5回と日経平均

日本側も確認します。マイナス金利解除以降の政策変更と、その後の日経平均です。

決定日 内容 日経平均 1か月後 3か月後
2024年3月19日 マイナス金利解除 40,004 −5.1% −4.8%
2024年7月31日 0.25%へ 39,102 −1.9% −0.5%
2025年1月24日 0.5%へ 39,932 −4.2% −12.7%
2025年12月19日 0.75%へ(30年ぶり) 49,507 +8.4% +5.5%
2026年6月16日 1.0%へ(31年ぶり) 69,405 −2.4%

5回のうち、1か月後がプラスだったのは2025年12月の1回だけです。

ただしこの2年半で日経平均は39,740円から66,132円へ+66.4%上昇しています。利上げの直後は下げても、長い目では上げてきたということです。

2025年1月の利上げ後に3か月で−12.7%まで下げていますが、この時期は関税をめぐる相場の急落が重なっています。金利だけが理由ではありません。

【独自集計】銀行株はすでにどれだけ上がったか

ここが、この記事で1番確認しておきたい部分です。

銘柄 マイナス金利解除前日 2026年8月28日 騰落率
みずほFG(8411) 2,966円 8,486円 +186.1%
三菱UFJ(8306) 1,533.5円 3,658円 +138.5%
三井住友FG(8316) 2,895.7円 6,902円 +138.4%
日経平均 39,740 66,132 +66.4%

出典:各銘柄の終値(Yahoo!ファイナンス)をもとに独自集計。期間は2024年3月18日〜2026年8月28日。

3行とも日経平均の2倍以上のペースで上がっています。

「銀行株は買い時か」への答え方

金利上昇が銀行の利益を押し上げるという理屈は正しいです。

ただしその理屈はすでに2年半かけて株価に反映されています。

いま検討するときの問いは「金利が上がると銀行は儲かるか」ではなく、「これから上がる分は、まだ株価に入っていないか」になります。

🔵 見るのは金利の方向ではなく、決算で実際に利ざやがどれだけ改善したかです。

なぜ銀行は金利上昇で利益が増えるのか

仕組みを押さえておくと、どこまで続くかを自分で判断できます。

項目 内容
利ざや 貸出金利 − 預金金利。この差が銀行の基本的な収益
金利上昇時に起きること 貸出金利は比較的すぐ上がるが、預金金利の引き上げは遅れる
結果 差が広がり、利益が増える
日銀当座預金 銀行が日銀に預けている資金にも利息が付くようになる

マイナス金利の時代は、この利ざやが極端に薄い状態でした。解除されたこと自体が、銀行にとって構造的な追い風になったのはそのためです。

銀行株が上がらなくなる3つの条件

ただし、この追い風は永続しません。

条件 何が起きるか
① 預金金利が追いついてくる 遅れて上がっていた預金金利が上がりきると、利ざやの拡大が止まる
② 貸し倒れが増える 金利上昇で返済が苦しくなる借り手が出る。与信費用が利ざやの改善を食う
③ 利上げが止まる/逆に下がる 追い風の前提が消える。期待で買われていた分が剥がれる

とくに②は、金利上昇が長引いたときに必ず出てくる論点です。銀行は金利が上がれば無条件に儲かるのではなく、「借り手が返せる範囲での金利上昇」でだけ儲かります。

確認するのは決算です。決算短信で与信関係費用がどう動いているかを見ると、この局面がどこまで進んでいるかがわかります。

金利上昇に弱い業種

業種・タイプ 弱い理由
不動産 借入で物件を持つ事業。金利上昇が直接コストになる。住宅ローン金利の上昇で需要も落ちる
電力・ガス・鉄道 設備投資が大きく有利子負債が多い
成長株・グロース株 利益が将来に偏っているため、割引率の上昇が効きやすい
高配当株の一部 債券の利回りが上がると、配当利回りの相対的な魅力が下がる
J-REIT 借入コストの上昇と、利回り商品としての競合が同時に効く

「借金が多い」と「利益が将来に偏っている」の2つが、金利上昇で弱くなる条件です。この2つは決算書で確認できます。

金利上昇に強い業種

業種・タイプ 強い理由
銀行 利ざやが広がる。ただしすでに大きく上昇済み
保険 保有する債券の運用利回りが改善する
現金を多く持つ企業 預金や短期運用の利息収入が増える
価格転嫁できる企業 物価上昇局面では、値上げできる企業ほど利益を守れる

「無借金で現金が多い」企業は、金利上昇局面で相対的に有利になります。自己資本比率と現金の水準は企業の成長性を測る指標の記事で見方をまとめています。

いまの金利の水準と、次に見る指標

項目 水準(2026年8月時点)
日本の政策金利 1.0%程度(2026年6月に0.75%から引き上げ・31年ぶりの水準)
米10年債利回り 4.7%前後
米国の政策金利 3.50〜3.75%

これから見るべきものを整理します。

見るもの なぜ見るか
金融政策決定会合 利上げの継続か打ち止めか。銀行株の前提が変わる
消費者物価指数 利上げの理由が続いているか
銀行の決算(利ざやと与信費用) 理屈ではなく実績で確認できる唯一の場所
住宅ローン金利 不動産の需要と、家計の負担に直結する
為替 日米の金利差が動くと為替も動き、輸出企業の業績に効く

金融政策の枠組みはFOMC利上げの記事で、為替の影響は円高の記事で解説しています。

よくある質問

金利が上がると株価は必ず下がりますか?
下がりません。米10年債利回りが60営業日で1.0ポイント以上上昇した局面を集計すると、22回のうち10回(45.5%)でS&P500は上昇していました。平均は−0.6%です。景気が強いことを理由に金利が上がっているのか、物価を抑えるために上げているのかで結果が変わります。金利の方向だけでは株価の方向は決まりません。
いま銀行株は買い時ですか?
売買の判断は個々の状況によりますが、事実として押さえておきたいのはすでに大きく上昇しているという点です。マイナス金利解除前日から2026年8月28日までで、みずほFGが+186.1%、三菱UFJが+138.5%、三井住友FGが+138.4%となっており、いずれも日経平均の+66.4%を大きく上回っています。「金利が上がると銀行は儲かる」という理屈は、すでに株価に反映されている部分が大きいと考えられます。
なぜ銀行は金利上昇で儲かるのですか?
貸出金利と預金金利の差である利ざやが広がるためです。金利が上がる局面では貸出金利が比較的早く上がる一方、預金金利の引き上げは遅れます。この時間差の間、差が広がって利益が増えます。加えて日銀に預けている当座預金にも利息が付くようになります。
銀行株の追い風はいつまで続きますか?
3つの条件のどれかが満たされると止まります。①預金金利が追いついて利ざやの拡大が終わる ②金利上昇で返済が苦しくなる借り手が増え、貸し倒れ関連の費用が増える ③利上げそのものが止まる、の3つです。とくに②は見落とされやすく、銀行は金利が上がれば無条件に儲かるのではなく「借り手が返せる範囲での上昇」でだけ儲かります。決算で与信関係の費用を確認するのが実務的な方法です。
なぜ成長株は金利上昇に弱いのですか?
株価は将来の利益を現在の価値に割り引いて評価されますが、金利が上がるとこの割引率も上がります。利益が遠い将来に偏っている企業ほど、割り引かれる度合いが大きくなるため影響を強く受けます。逆にすでに安定した利益を出している企業は、影響が相対的に小さくなります。
日銀が利上げすると日経平均は下がりますか?
マイナス金利解除以降の5回では、1か月後がプラスだったのは2025年12月の1回だけ(+8.4%)でした。短期的には下げやすい傾向が出ています。ただし2024年3月から2026年8月にかけて日経平均は+66.4%上昇しており、利上げが続いた期間全体では上げています。利上げ直後の反応と、その後の方向は分けて見る必要があります。
金利上昇で不動産株が弱いのはなぜですか?
2つの経路で効くためです。ひとつは借入コストの上昇で、不動産会社は借入で物件を取得するため利息の増加が直接利益を減らします。もうひとつは需要の減少で、住宅ローン金利が上がると住宅を買える人が減ります。売る側と買う側の両方に効くため、金利上昇局面では影響が大きくなります。
金利の情報はどこで確認できますか?
日本の政策金利は日本銀行の金融政策決定会合の結果で、米国はFOMCの結果で確認できます。長期金利は10年国債の利回りが指標になります。ただし投資判断に使うなら、金利そのものより「利上げの理由が続いているか」を見るほうが実用的です。消費者物価指数や雇用統計が、その材料になります。

まとめ|見るのは金利の方向ではなく理由

この記事の要点
米金利が急上昇した22回のうち、S&P500が上がったのは10回(45.5%)
金利が伝わる経路は3つ。景気が強いことによる上昇なら株高もありうる
日銀の利上げ5回で、1か月後がプラスは1回だけ。ただし期間全体では日経平均+66.4%
銀行株はすでに+138〜186%。理屈はもう株価に入っている
銀行の追い風が止まる条件は①預金金利が追いつく ②貸し倒れが増える ③利上げが止まる
弱いのは借金が多い企業と、利益が将来に偏っている企業

金利と株価の関係は、方向だけを覚えても使えません。同じ金利上昇でも、景気が理由なら株高、物価が理由なら株安に振れやすいという分岐があります。

そして銀行株については、理屈の正しさと、いまから買って報われるかは別の問題です。確認する場所は金利のニュースではなく、決算に出てくる利ざやと与信費用ということになります。

※ 本記事の集計は日経平均株価・S&P500・米10年債利回り・各銀行株の日足終値(Yahoo!ファイナンス)に基づく独自集計です。政策金利の水準は2026年8月時点のものです。過去の傾向であり、将来の値動きを保証するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

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