概要
この度、当社は、札幌医科大学とがん細胞内侵入能力を有する抗体を用いた抗がん剤の開発に向けて、共同研究契約(以下、「本契約」といいます。)を締結いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。
1.本契約締結の目的及び理由
当社は、2018 年度より新たな事業ステージを指す GTS3.0「バイオで価値を創造するエンジニアリングカンパニー」を目標に掲げ、これまでの事業活動で得てきたバイオ技術に関するノウハウ及び知見を最大限活用し、従来より手掛けてきた希少疾患、難病に加えて、小児疾患を重点的なターゲットと定め、これらの疾患に悩む患者様、そのご家族や介護者の方を含めた包括的なケアを目指して、新薬のみならず新たな医療の開発・提供に取り組んでおります。本契約は、将来の成長ドライバーであるバイオ新薬事業の新たなパイプラインとして希少がんや難治性がんに対する新たな抗がん剤の開発を目指すものであります。
近年のがん治療は、がん細胞の異常増殖シグナルを選択的に阻害する医薬品や、がん細胞のみを選択的に認識する抗体医薬品等の出現により、その治療効果は飛躍的に改善しております。その一方で、抗体医薬品単剤では治療効果は限定的なため、臨床現場では既存の他の抗がん剤と抗体医薬品の併用投与が一般的な治療となっております。近年、がん細胞を認識する抗体に細胞毒性を有する低分子薬物を結合させた抗体薬物複合体の開発が盛んに行われ、本邦においても、二つの抗体薬物複合体が上市されており、顕著な治療効果を示しております。
札幌医科大学医学部付属フロンティア医学研究所の山口美樹助教は、がん細胞をマウスに免疫することにより、がん細胞表面のみに発現する分子に結合し、かつ、がん細胞内への侵入能力を有する抗体を多数保有しております。当社は、これらの中からがん細胞の認識特異性とがん細胞侵入能力に優れた抗体を選び出し、それらの抗体に低分子薬物を結合させた抗体薬物複合体や細胞障害性タンパク質を連結させた免疫毒素(Immunotoxin)を創製し、単独でも優れた治療効果を示す抗がん剤の開発を目指します。